冒険者、怪人にスカウトされてヒーローになる。

浅木宗太

第1話

「なぁ、アンタ、ヒーローにならねぇか?」

真っ黒で硬そうでいかにも見慣れないそいつは僕に向かってそう言い放った。

僕の名前はレクス。レクス・フェルター。ただの冒険者である。

欠点があるとするならば、どんなに頑張っても攻撃が魔物に当たらず、万年薬草摘みで生計を立てている事だ。本当は故郷の妹を良い学校に行かせてやるためにも、もっと上のランクの依頼を受けたいのだが、如何せん何も当たらないのであればどうしようもない。

いつも通り薬草の納品を終え、間借りしている宿への帰り道、近道をしようと路地裏を突っ切ろうとしたのが運の尽きであった。

話は冒頭へと戻る。この真っ黒で異質な鎧のような物を身にまとった人は確かに僕にこう言った。

「なぁ、アンタ、ヒーローにならねぇか?」と。

ついでにこうも言ったのだ。

「上手くいけばボーナスも出るぜ」

僕は即座に返事をした。

「やります」

真っ黒なヘルムにどういう魔術なのか、電光のような表情が映される。

「よし、決まりだ!アンタにはヒーローショーで子供達の憧れになるヒーローになってもらうぜ!」

かくして、僕はヒーローへの第一歩を踏み出すこととなったのである。

「あ、これ雇用契約書な。読んで大丈夫だったらここサイン」

「あ、ちゃんと仮採用期間があるんだ……」

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冒険者、怪人にスカウトされてヒーローになる。 浅木宗太 @amatuki003

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