奇病

_別の日

 私たちは、その日、夏休み前、最後の学校だった。いわゆる、『終業日』というやつだ。早めに授業が終わり、部活もないから帰ろうと思っていた。

 その時、放送のスピーカーから、音が鳴った。

「あーあー、えっと、連絡です。2年生の朝寝さん、朝凪さん、宵闇さん、枯木さんは、演劇部部室へお願いします。繰り返します_。」

 それは、山田先生からの呼び出しだった。せっかく帰って、貯めてたアニメ見ようと思ったのに。そう思いながら、私はトボトボと部室に向かった。

 部室のドアを開けると、そこにはすでに、透華と冬樹がいた。秋溶はまだ来ていないようだ。確か、生徒会の何かで先生に呼ばれていたような...。

 そんなことを考えていたが、それを遮るように、山田先生が部室に入ってきた。

「あらー、みんなはやーい。先生感心しちゃうっ!」

「うわ、きもっ。」

 うわ、すごいストレートにいうじゃん。

「はぁ?すげぇストレートにいうやん。」

 冬樹なんかもう驚いちゃって、関西弁で突っ込んじゃってるよ。流石にこれには、先生も傷ついたか?と思い、山田先生の方に視線を向けた。

「ヤダァー、透華ちゃんすごくストレートっ!でもそんなところも好きっ!」

「うわ、きんも、先生キモオタみたい。」

 やべっ!声に出ちゃった。まあ、なんか喜んでるし、いいか。そんな会話をしていた時、部室のドアがあいた。そこには、生徒会の話が終わったであろう、秋溶がいた。

「みんな、遅れてごめんね?もしかして、もう始まってる?」

 秋溶は、おずおずと私たちに聞いてきた。

「いや、全然始まってもないぞ。」

「こいつのせいで、全く進まないの。」

 先生が、生徒からこいつ呼ばわりされることがあるだろうか。いや、ない。少なくとも、私の今までの学校生活で、そんな場面を見たことも聞いたことも、もちろん、言ったこともない。それほど、山田先生は嫌われているのだろう。そんなことを考えていると、ふいに山田先生が立ち上がって話し始めた。

「もー仕方がないなぁ。それじゃあ、...話を始めようか。」

「「「「っ、はいっ。」」」」

 珍しく、山田先生が真面目に話し始めたのか、それとも、山田先生から放たれる雰囲気に圧倒されたのか、私たちは、改まって席につき、返事をした。私たちは、これから山田先生が話す内容が、私たちをここに集めたことが、大きな進展になるとは、思ってもいなかった。

「こほん、まず確認だが、君たちは、"奇病"にかかっているね?」

 先生のその言葉に、私たちは驚いた。何故なら、先生が口にした"奇病"は、私たちしか知らないことで、誰にも話したことがないからだ。もちろんそれは、山田先生にも話したことがない。

「お前、なんでそれを知ってるんだ!」

「おや?その反応をするということは、間違っていないということだね?」

「そうだけど、なんでそんなことを知っているのよ。

「どこで知ったんですか。そんなこと。」

 3人が先生に捲し立てる中、私は、その希薄に圧倒されてしまい、声が出せずにいた。私も、反応したほうがいいのに、驚くあまり、それ以外に、何も反応ができなかった。

「まぁまぁ、そうカッカするな。俺の家計がそういうのを専門的にやってたみたいでよ。今はもう続いていないが、ふと、本を見た時、そこに書いてあった雰囲気とお前らの雰囲気が似てたから。一応聞いてみたんだ。」

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愛笑ーアイショウー ポン酢パン @chic4520

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