演劇部
秋溶の手を引き、だどりついたのは演劇部の部室。ここで透華と冬樹が待ってるはずだ。早速中に入ろう。
「2人ともー!遅れてごめんね。」
「ごめんね、委員会の集まりで少し遅れちゃって...。」
「...ああぁ、秋溶と春菜か...お疲れ...。」
「えっ?何があったの?なんかすごいドヨーンってしてるんだけど。」
部室に元気よく入ったが、そこには椅子に座って手をだらーんとさせ、机に突っ伏している透華と冬樹の姿があった。いったい何があったのだろうか。
「ねぇ、僕たちがいない間に何があったの?」
「今の俺たちを見たらわかるだろ...。」
「それって...。」
「あのクズ教師の奇行よ...。」
「ああぁ、いつものか...。ご愁傷様。」
秋溶は、2人に向かって話しかけた。2人がこうなったのは、"クズ教師"時いう人が原因らしい。
「なになにー、何話してるの?」
「なんでもないよ。」
「ああ、なんでもねぇ。」
「えぇ、なんでもないわ。」
私が話しかけてもみんな"なんでもない"と言い、私には話してくれなかった。それだけ私に知られたくないことなのか、はたまた教えたくないだけか、今の私にはわからない。
そんなことを考えていると、後ろの方から声が聞こえた。
「おっ、春菜ちゃんに、秋溶じゃあないか。集まりは終わったのか?」
「うわぁ!!先生いつの間に私の背後に!?」
その声の主は、山田先生だった。山田先生は私たち演劇部の顧問でもある。だが、先生の気配を1ミリも感じなかった。もしや、忍者の末裔かなんかなのか?
「あらら、驚かせちゃったかな?ごめんねぇ春奈ちゃん♡」
そう言うと、山田先生は私の頭を撫で...ようとしたが、私の頭に触れる寸前で秋溶が手を止めた。
「先生?春菜には近づくなって、あれほど言いましたよね?」
「ごめんてー、ちょっとした出来心ってやつだよー。許してっ。」
「許すわけないでしょ、犯罪者予備軍が。」
秋溶からは、普段の優しく暖かい雰囲気とは違い、殺意がこれでもかというくらい溢れていた。それでも山田先生は怯むどころか、むしろその状況を受け入れ、ふざけているように感じた。まぁ、それが秋溶をもっと怒らせたのだろう。秋溶は山田先生のことを"犯罪者予備軍と言った。
「ほんとそうだよなぁ!?やっぱこいつ、犯罪者だよなぁ!」
「てか、なんでこんな人が教師になれたの?理解できない!!」
えっ?先ほどまで机に突っ伏していた透華と冬樹が、急に顔をバッ!っとあげ、勢いよく話し始めた。というより、先生に怒っている。そんなに先生が何か変なことをしたのか?ほら、秋溶も少し驚いている。
「えっ?2人とも、さっきは何があったの?」
「どうして私たちがこんなに怒っているのか...。」
「ことの経緯を説明しよう...。」
2人は急に部室にある小さい舞台に立ち、真面目に話し始めた。
「これは数分前...。春菜と秋溶が、ちょうど委員会の集まりにいっていた時よ...。」
数分前_
「なんなんだよあのクソ教師!まじでムカつくなぁ!!」
「あれは私でもイラッとしましたわ!なんなのあの教師!!なんであんな人が担任なわけ!?」
「もっとむかつくのは、あのクソ教師は...」
「へーーーい!!!みんなげんきかーい!!」
「噂をすれば...。」
「アレェ?透華、元気なくないウォウウォウ♪」
「あのウザいんで離れてください気持ち悪っ、んんっ、この事、お父様にちくりますよ?」
「ヤダァ、透華ちゃんチュメタイ。」
「ほんと、なんでこんなやつが教師になれたの?」
「こんな犯罪者予備軍みたいなやつが俺らの担任とかありえねぇ...。」
「本当にそうね...。」
「「はぁ...。」」
_現在
「...とまぁ、こんな感じよ。」
すごい。山田先生、どこでも犯罪者呼ばわりされている。かわいそうにと同情しようと思ったが、流石の私でもわかる。これは流石にやばいのではないか?先生が"犯罪者予備軍"と呼ばれている理由がわかった気がする。
「だが、まだ話は終わっちゃいねぇ。」
「こんなんで終わらないのが"犯罪者予備軍"のやばいところよ。」
まだあるのか?なんか、色々とすごかったんだな。
「さっきの話の続きをしよう...。」
数分前_
「とりあえず、部活始めちゃおうぜ。秋溶たち時間かかるだろうし。」
「そうね、そうしましょう。ほら山田先生、部活始めますよ。立ってください。」
「透華ちゃんが、僕に指示を...!」
「もうほんと気持ち悪い...!いい加減にしてください!」
「そうだそうだー気持ち悪いぞー!」
「透華ちゃんがチュメタイ...。グスン。」
「あぁもう!そんなんどうだっていいだろ!早く部活始めようぜ。」
「男が私の手を触るなぁーーー!!!」
「もうこいつなんなんだよっ!!」
「先生いい加減にしてください!お父様にちくりますよ!!」
「ひぃぃいそれだけはご勘弁おー!!」
「でしたら真面目に...いや、すごく、めっちゃ真面目にやってください!これじゃあ部活が始められません!!」
そうだなぁ...透華ちゃんにも言われてるし、真面目にするかぁー。」
「はぁ...、やっとだ...。」
「お前も...大変だな...。」
_現在
「...これが、ことの経緯よ。これでわかったでしょ。私たちがどんな目にあったのか。」
「本当に大変だったね...お疲れ、2人とも。」
2人が今までどんなことがあったのか、よくわかった。山田先生って、私が気がつかなかっただけで、相当やばい先生なんだな。そう思い、スマホの時計を見てみると、17:00になろうとしていた。
「みんな!後ちょっとで5時だよ!」
「確か、完全下校時刻は17:30だよね?」
「やばくね?早く部活始めようぜ!」
「そうね。早速始めましょう!先生、お願いします。」
透華の合図とともにみんなが一斉に先生の方を見た。
「おっと、その前に紹介したい人がいるんだ。入ってきていいよー!」
「紹介したい人?」
みんな、先生が話し始めるのを待っていると、先生は"紹介したい人がいる"といい、赤紫色のリボンをしている、可愛らしい女の子が入ってきた。
「それじゃあ、時雨ちゃん。挨拶して?」
「えっと...はっ、はじめまして...。暗涙時雨です。えと、一年生です。よろしく、お願いします。」
「えーと、今日から演劇部に入ることになった、時雨ちゃんだ。みんな、仲良くしてやってくれよー。」
私たちの演劇部に新しい子が入ってきた。演劇部は、今は私と透華、秋溶、冬樹の4人が主に活動しており、肩部もありのため、他の人は別の部活に力を入れている。まぁ、文化祭の時は、流石に演劇部を優先的に来てくれるこの方が多い。
そんな中、彼女、時雨ちゃんが来てくれた。1年生はあまり入っていなかったので、とても嬉しい。そういえば、時雨ちゃんは、どうして演劇部に入ったのだろうか。せっかく本人がいるんだ。ちょっと聞いてみよう。
「時雨ちゃん。初めまして!私朝寝春菜っていいます!これからよろしくね。」
「よっ、よろしく、お願いします...。」
少し緊張しているのか、とてもか弱い声で話している。まぁ、誰しも最初は緊張するだろう。
「私気になってたんだけどさ。なんで演劇部に入ってくれたの?」
「えっと...それは、内緒...です。」
こんなことを言われるなんて、思ってもいなかった。想像の斜め上の返答をされた私は、口をポカーンと開けたまま硬直していた。
「えっと、先輩?だっ、大丈夫...ですか?」
「あぁ、その子は大丈夫よ。いつものことだから。」
私が固まっていると、後ろから透華が話しかけてきた。そして、思いっきり私の背中を叩いた。
「っ、いったぁ!!何すんのさぁ!!」
「あんたが固まってるのが悪いのよ。ごめんね時雨ちゃん。変なところ見せちゃって。」
「いっ、いえ...。」
固まっていたからとはいえ、叩くことはないだろう。そんなことを悶々と思っていると、時雨ちゃんは私たちに向かって話し始めた。
「えっと...皆さんのお名前は?」
「そういえば、自己紹介まだだったな。」
確かにそうだ。先生から時雨ちゃんの紹介はあったが、私たちは自己紹介をしていない。そんな時、透華が時雨ちゃんの前へ行き、自己紹介を始めた。
「初めまして、時雨ちゃん。私は、朝凪透華です。よろしくね。一応、この演劇部の副部長よ。そして、この隣のバカは...。」
えっと、バカ、バカ、えっ、もしかして私のことかな?
「えっ?もしかして私だったりする?」
「あんた以外に誰がいるの?私の目線の先はあんたしかいないけど。」
やっぱり私のことか。友達をバカ呼ばわりするなんて、なんてひどい。
「バカとはなんだ!ばかとはぁ!...まぁいいや。さっきも言ったけど、朝寝春菜です。この演劇部のムードメーカーだよー!よろしくね。時雨ちゃん!」
「ムードメーカーというより、ただバカみたいな行動や言動が多いだけでしょ?」
「透華ぁ?」
そんなことを話していると、誰かが止めに入った。
「こら、後輩の前だよ?そんなことしないの。」
「秋溶ぉ〜、透華が虐めてくるぅー。」
「はあぁあ!いじめてないわよ!!」
「まぁまあ。」
「秋溶も大変そうだなぁ。まぁ、俺は知ったこっちゃねぇが。」
_数分後
私と透華の言い合いが治ると、秋溶は時雨ちゃんに向き直し、改めて自己紹介を始めた。
「こほん、変なところ見せちゃってごめんね。僕は宵闇秋溶っていいます。よろしくね。」
「はぃ、お願いします。」
「ほら冬樹も自己紹介しなさいよ!」
「えぇー、はぁ...。俺は、枯野冬樹だ。」
「よろしくって!」
「あー、よろしく。」
「よっ、よろしく、お願いします...。」
やっとのことで自己紹介が終わり、完全に蚊帳の外だった山田先生に視線を向けた。
「おっ、自己紹介タイムは終わったのか?」
「はい!終わりました。」
「よし、じゃあ部活を始めよう。と、言いたいところだが、そろそろタイムアップだ。」
そう言われて、スマホの画面を見ると、17:25になっていた。完全下校時刻は、17:30だ。そろそろ部活を切り上げる時間だ。
「やば!もう25分じゃん!!」
「あと5分しかないじゃない!」
「うんうん、そういうことだから、時雨ちゃんも入れての活動はまた来週ねー。それじゃ、解散っ!」
先生はそういうと、そそくさと部室を出て行った。私たちもそろそろ帰らないとまずい。
「私たちも帰りましょう。」
「そうだね。日も暮れちゃうし。」
「校門も閉まっちまうしな。」
「よし、じゃあ早く帰ろっ。時雨ちゃん!また来週の部活で会おうねー!」
「はっ、はい!また、来週...。」
そういい、手を大きく振って時雨ちゃんと別れ、私たちは帰路についた。
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