第6話 Q:え。魔王だったの?
「
「お早いお帰りで!
「「……
A:違う。勝手にコイツらからそう呼ばれてるんだよっ!
「というか、アンタの知り合い?」
「…勝手に住み着いてきた連中もいるが、戦える連中は基本俺の部下ってことになっている」
「……貴様、いや、ダース殿は亜人を奴隷にしているのか?」
「奴隷じゃない。仲間だ」
「「…………」」
ありゃ? 亜人を見るのは初めてか。
どうやらアデラ達は俺氏の村に人間以外の種族がいっぱい居たからか、襲われてると勘違いしちゃったらしい。
このうっかりさんめ!
そりゃちょっとグレてても所詮はお姫様だもんなあ~…帝国でならまだしも、ゴブリンやらオークやらなんて普段そうそう見掛けないのか?
ダークエルフの連中まで驚いてるみたいだが…きっとエリートの都会出身者ばかりだからだろう。
他にも種族が居るが、レイングラスには俺氏が主に帝国から
マイ・ダディ&ビックブラザーの指示の下に領地開墾に勤しんでいたりな。
何せレイングラスは広大な草原地で他には本当に何もない。
同フォースボーン家の他の領地もほぼ同様な感じ。
利用しないだけ損というものだ。
辺境伯から褒美で土地を幾らか貰っているが、どうせくれるならもっと産業に向いたハイカラな場所が欲しいもんだよな…。
だが、ゴブリンはチビだが器用で割と何でもできるし。
オークは血の気が多くて戦馬鹿な奴が多いけど、生粋の戦闘民族で特に山岳戦に強くて頼りになる。
根は真面目なんだが、暇になるとこうして隙あらば村民と共に宴を催すのが少しパリピ過ぎるけどな。
「ぐがっるあああああああ!!」
「ピュイイイイイイイイ!!」
「ひぃー! いや、ゴブリンとオークは兎も角、魔物!? 魔物が襲ってきてるってば!?」
アラララ…知らない人が来たからちょっと興奮しちゃったのかな?
普段は大人しいんだが、全く困った奴らだ。
「ふぅ……ファング」
「ブッフゥシュハアアアアアア!!!!」
「「~~~~~~っ!!」」
流石だな、相棒?
いつもコレ一発で鎮めてくれる。
まあ、やられた側は下手するとファングのブレスの餌食になって
「ぐ、グリフォン…」
「それに有翼の猛獣、ウイングタイガーまで…」
「本当に
おいおい。そこまで怖がらなくてもいいじゃんね?
皆、いい子だぞ?
え。というか
……何か、俺氏まで怖がられてない?
アズーラ女史に至っては、完全に俺を敵視してるよね?
お、俺氏も割と見た目の割には、いい子だぞ?
鷲の頭とライオンの胴に猛禽類の爪を持つグリフォンなんて超有名だろ。
“虎に翼”をまさに体現したウイングタイガーなんて火まで吐けるんだ。
弾数制限(※体内に貯蔵したアルコールなどを消費)あるけど。
コイツら見た目もカッコイイし、空も飛べて超便利だぞ?
まあその分持久力に難があって、そんな遠くまでは飛べないが。
行商人の情報によると帝国との国境線扱いにもなっている大山脈、“世界蛇”の山頂付近にもっと高スペックでレアな未確認飛行魔獣がいるらしい。
いやぁ~魔物マニアとしては是非一度見てみたいし、可能ならば手に入れたいところだ!
きっと我が家の末妹も喜ぶに違いないぞ!
「…乗ってみるか?」
さり気なくどっちも試乗に誘ってみたんだが、おもっくそ首を横にブンブン振られて断られてしもうた(全滅)
もしかして、高所恐怖症?
いや、また誘うとしよう!
それにもう暗いし、前世と違って電気の有難味もないこの世界じゃ夜景なんて単なる漆黒の闇でしかないからな。
あ! なら絶景の星空は……ダメだ、今日は曇っている。
流石に雲の上までは飛んでいけないからな。
残念ながら我が家でも流石にドラゴンまでは飼ってない。
――さて、帰ってきたもののどうするか。
直接連れて行くのは拙いのでは?
そもそも我がフォースボーン家の持ち家は屋敷と呼べるものではないし、部屋を用意できてもアデラの分くらいだろう。
それに、世話はどうする?
流石に公国のお姫様の相手を村の女や末妹に任せるのは酷だろう。
同年齢程度で物怖じしそうにないとすれば……。
俺氏はいつの間にやらダークエルフ達にまで酒や肴を勧める油断できんゴブリン達に声を掛けた。
「おい。ギグ達は何処だ」
「へい!魔王様。女勇者殿なら確かレイクマーマンの建築現場を手伝ってるはずでさァ」
……だから、人前で魔王、魔王って連呼しないで欲しいんですけど?
人をラスボスか何かだと思ってやがんのか?
今更言っても仕方ないか…帝国で助けてやった時からこうだもんな。
レイクマーマンなら走って一時間くらいだな。
「悪いが頼まれてくれないか? …
「はあ。女手…ですかい? もしや、その御客人は! 魔王様の…?」
うわっ恥ずかしい! 言わせんなよなぁ~?
取り敢えず、塩顔で頷いとこ。
「うおおおお! 飲んでる場合じゃねえ~!? 皆の衆っ!大変だあ!!」
「……何ぃ!? 本当かよ!」
「おめでとうございます! ダース様!」
「「フォースボーン万歳!!」」
「おい! ちゃんと領主館まで来いと伝えろよ…」
ヤバス! 迂闊な素振りをしたことで、かなりの騒ぎになってしまった。
早くこの場を退散しよう。
が、もう村の中だからファングで突っ切る訳にはいかん。
ダンプカーだからなコイツ。
「御苦労だったなファング。もう好きにしていいぞ! …あ、アデラ? 降りるぞっ!」
「うぇい!?」
「ブッフィハアアアアアア!!」
アデラを抱っこして地面に降り立つとファングが絶叫しながらお気に入りのベストプレイスである森の湖畔へと爆走していった。
ゴブリン達がそんな俺氏達を見て口笛を吹いて囃し立ててくる。
ウザイ! 恥ずい!? もうさっさと家に帰ろう!!
村の屋根伝いに突破するルートにしよう。
「しっかりと俺に掴まれ。……
「…え゛。またぁ!? ちょまアアッーーーー!!」
「ひっ姫様ぁー!?」
これで月夜があれば実にロマンチックだったんだろうが、こうして宴で更に盛り上がるレイングラスの村の上空で――アデラの悲鳴とダークエルフの怒声が響くのであった。
モブ転生貴族の俺が悪役令嬢を嫁にして建国までしちゃうんだけど、何か質問ある? 森山沼島 @sanosuke0018
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