第42話 ダンジョンの構造

 パロンは、あのマシンを【アイアンゴーレム】と呼んだ。


「あれもゴーレム?」


 見た目は、四本足の小さいおもちゃのロボットだけど。サッカーボールくらいの大きさしかない。


「ビッ!」


 頭の球体から、雷の矢を放つ。


「うわっ!」

 

 ボクは、杖を構えてガードする。


「コーキよ! ワシは、それに撃たれたんじゃ!」


 じゃあ、このアイアンゴーレム

 

「お返しだ! ファイアーボール!」

 

 杖を振って、火球を撃ち出した。


 だが、ゴーレムの硬い装甲はボクの炎を弾く。大型のカメは倒せたのに。


「遠隔魔法は、鉄型モンスターと相性が悪いのかも?」


「じゃあ、直接攻撃しよう!」


 杖を、木槌に変形させる。


「もぐらたたきアタック!」


 目一杯スイングして、アイアンゴーレムを叩く。


 打ちどころがよかったのか、鋼鉄製の魔物は動かなくなった。


「【サンダーソード】!」


 近接攻撃で、パロンがゴーレムを切り捨てる。剣に電撃魔法を帯びさせて。


 感電したのか、鉄のモンスターが崩れ落ちた。


 とはいえ倒しても倒しても、アイアンゴーレムは続々と現れる。


「パロン、数が多いよ!」


「どこかに、製造元があるはずだよ! そこを叩こう!」

 

 その前に、この大群をなんとかしないと。

 

 くそ。ゴーレムにはゴーレムだ。


「アタックトーテム!」

 

 ボクは地面に手を置き、だるま落としゴーレムを召喚しようとした。


「……あれ?」


 一向に、トーテムが生成される気配がない。


「ずるいよ。アイアンゴーレムは作れるのに、トーテムはムリだなんて!」


「きっと、土魔法を受け付けないんだ!」


 それでか。ここはボクには不利な場所なのかも。


「戦闘も、工夫次第じゃ、コーキ」


「工夫しろって言ったって!」


「お主はここを、どうやって登った?」


「……よしっ」


 ボクは再び、接近戦を挑む。武器を持たずに。


「やってみるよ、クコ! パンチ!」


 アイアンゴーレムに、ボクは拳を叩き込んだ。相手にダメージが通った感じではなかった。しかし、ボクの目的は直接的な打撃ではない。


「ツタよ、伸びろ!」


 魔物の身体の隙間に、ツタを伸ばす。

 雷撃を受けても、木の盾でガードする。


「モンスターを構成している魔法石だけを狙って……そこだ、行けっ!」


 魔法石の感触を掴み、一気に引き上げた。


「よし。紫の魔法石を手に入れた!」

 

 動力源を引き抜かれて、ゴーレムが機能を停止させる。



 また、ゴーレムが現れた。


「攻略法がわかったら、こっちのものだ!」


 ツタで体内に侵入し、魔法石を取り除く。



 雷撃の熱光線を目から発射して、ゴーレムもボクの攻撃に対抗する。


 でも、そんなのお見通しだ。

 今度は、雷攻撃を受けてもゴーレムの抜け殻を盾にしてしのげる。


「パロン!」


「サンダーソード!」


 ショートソードに雷の魔法を施して、パロンがゴーレムの頭に突き刺す。


 ボクが敵の注意を向けさせて、パロンが攻撃を与える。


「直接、パンチしてやる!」


 ゴーレムを手にくくりつけて、アイアンゴーレムを殴り飛ばした。


 アイアンゴーレムが、ビリヤードみたいに弾け飛んで、隊列を崩す。


「今だ! まとめてソーンバインドで!」


 ツタをゴーレム全部に絡ませて、一気に数体分の魔石を抜き取った。

  

「なんとか、全滅させたかな?」

 

「はあ、はあ。大丈夫、みたい」


 さすがのパロンも、ヒザから崩れる。かなり参っているようだ。


「どこか、安全な場所に避難しよう!」


 あらかたの敵を片付けて、ボクたちは休めるところまで向かう。


 ちょうど、草原のような場所に出た。多少だが、水たまりもある。


「ダンジョンに、草むらがあるなんて」


 そう思ったけど、今は休むほうが先だ。


「みんな、果物をどうぞ」


 ボクはツタを伸ばし、ブドウを実らせた。


「ああ、ブドウがおいしい!」


 パロンが房ごと、ブドウをもぎ取る。ひとくち食べただけで、目がシイタケになるくらい喜んだ。


「うむ。これが酒だったら、なおのことよかったのじゃが」


 クコは、物足りなさそう。


「ガマンなさい、賢人クコ。まだ探索は始まったばかりだよ」


 ため息をつくクコを、パロンがたしなめる。


 ボクは、水たまりの水分を吸って休んだ。


 身体から苗を生やして、取り出す。抜いた苗を、地面に指した。


 ここを拠点にして、水分を外から吸い上げよう。


 うん。わずかに、水の気配を感じる。ここだけ地下水が、大地に染み込んでいる感じだ。水は、地中不覚で保存されている。


 やっぱりここは、ボクの思ったとおりの。


「パロン、探索なんだけどさ……」


 ボクは、自分のアイデアを話してみた。


「ダムだって、ここが?」


「うん」


 ここって昔は、天然のダムだったんじゃないかなって思ったのである。


「コーキ、質問」

 

「なんなりと」


「ダムって何?」


 そこからかー。


「岩と土でできた、人口貯水池だよ」


 ダムってたいてい、山脈に作るんだけど、ここの人たちは渓谷の川をせき止めてダムにした。


「用途は?」


「色々さ。水をキレイにしたり、漁業や農業にも使う。電気……ボクたちの世界で主につかわれているエネルギーを、作ったりもするんだ」


「水の力で、エネルギーを作るとか。魔力みたいなものかな?」


 説明が難しいよぉ。


 でも、木が生えている気配が、わずかにしていた。


 しかも、結構弱っている……。

 

 助けないと。

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2025年1月11日 07:03
2025年1月12日 07:03
2025年1月13日 07:03

ウッドゴーレムに転生しました。世界樹と直結して、荒れ地を緑あふれる大地に変えていきます 椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞 @meshitero2

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