第41話 ダンジョン入口発見

 ドローンを増やして、入口を探索した。

 といっても、ボクのドローンはオトリである。


 ドローンに乗っていたクコが、何者かから攻撃を受けた。魔力弾を撃たれたのである。


 クコが撃たれたポイントに、ボクはドローンを集めてみた。食いついてくれたら、敵の位置を特定できる。


 やっぱり相手は、魔法弾を撃ってきた。弱い弾であるが、ボクたちの邪魔をしているのは確定である。


「どうする? 相手をするなら、探索を中断するけど?」


「いいよ。放っておこう」


 敵が内部にいるなら、ダンジョンの中に入って相手をすればいい。隠れているってことは、それほど強くないと見ている。


「それに、あの攻撃はカモフラージュの可能性も捨てがたい」


 ボクたちの注意をこちらに引き付けて、罠を張っている場合もあった。


 相手の挑発に乗ったフリをして、引き続きダンジョンの入口を探す。


「コーキ、あったよ!」


 パロンのトンボドローンが、ダンジョンを発見したという。


「空気の流れを読んだら、こっちにつながっているとわかったよ」


 森林限界地点に近いポイントに、洞穴のようなものを見つけた。


 ドローンを追って、ダンジョンの地点まで向かう。


 入口までの道のりは、険しい崖だ。この道を登ろうとすると、さっき攻撃を受けた場所を駆け上がらなければならない。

  

「こんな高い崖を、どうやって登ろう?」


「ボクに考えがあるよ。クコは、ボクの服の下に隠れていて」


 しゃがんで、ボクはパロンを背負う。


「どうするの?」


「こうするんだ」


 身体に魔力を流し込み、ボクはツタを伸ばした。ツタをロープ代わりにして、手ごろな岩に引っ掛ける。


「よし」


 ワイヤーの要領で、崖をスーッと登った。


「おお、早いっ」


「よし。もういっちょ」


 ツタのワイヤーを、さらにもう一本伸ばす。


「これでよし」


 入口のある頂上に、到着した。あっという間に。


「コーキ、キミってほんとに、シャーマンなのかい? レンジャーに転職したら?」


「探索に興味を持てたらね」


 今は自然を再生させることしか、頭にないかなぁ。


「あとは、帰り道を確保しよう。ここから帰るか、わからないけど」


 念のため、ツタの元になる枝を突き刺す。


 ツタが、みるみる伸びていった。水はあらかじめ、道中で掘ってきた小さい川から引いている。水不足になることはないだろう。


 アサガオのカーテンとか、お屋敷の壁みたいになった。帰りやすいようにするためだったんだけど、これでも日除けになっていいかもね。


 ダンジョンへ入る前に、頂上から渓谷の形を見た。

 

「渓谷っていっても、円形に広がっているんだね」


 川というより、大きな湖を連想させる。


「ここはね。さっきまでは、細く並んでいたじゃん」


「このポイントだけは、谷じゃないのか」


 峡谷の頂上から、森が見える。位置的に、拠点のような気がするけど。


「あれって、ボクたちが作った拠点?」


「そうだよ。ここのモンスターを一掃して、あの森からも水を引っ張っていけたら、ここら一帯の水不足も解消されて、人も戻ってくるかも。北には王国もあるし。


 だとしたら、なんとしてもこのエリアをどうにかしないと。


 入り口こそ、岩と遜色ない。目を凝らさないと、わからない位置にあった。


「入ろう、コーキ。ダンジョンへ」


 洞窟の中へと、入る。


「冷たい。寒いというより、空気が冷たいね」


 直射日光や砂嵐を防げるのはいいけど、冷気がしゃれにならない。


「体温を調節して、進もう」


 入口付近にいる魔物は、比較的弱い。といっても、かなり高レベルじゃないと倒せない敵ばっかりだが。


「【アタック・トーテム】」


 ダルマ落としのトーテムだけ設置して、入り口の安全を確保した。


「大昔の人は、どうやって昇ったんだろう?」


「ひょっとして、入った場所は滝の出るポイントで、裏側に入口があったとか?」


 ボクは、ナイスアイデアだと思った。ゲームとかアニメとかでは、秘密の入り口なんてのはよくある。


「コーキって時々、安直だよね」


「正しいとしても、信じたくないのう……」


 しかし、パロンとクコの反応はなんか鈍い。


「え、ちょっとまって。これ、コケだ。コケが化石になってる!」


 壁を触って、パロンが目を丸くした。


「ここが水路だって説は、間違っていないかも」


 おお、まぐれだね。


「でも奥へ行くと、なんか鉄っぽい。いや、壁一面が鉄でできているね」


 ホントだ。この手触りは、鉄じゃないか。


「水が出るところに、鉄を?」


「うん。サビてるから、鉄なのは間違いないかも」


 さらに進む。


「うわ、空洞だ」


 いたるところに、石でできた空間があった。底が見るないほど、深い。


 しかもこの石には、人工的に削ったあとがあった。


「コーキ。どうもここって、洞窟って感じじゃないよね?」


「ここはもしかすると、貯水場かもしれないね」


 水が復活すれば、ここの土地も。


 それにしても、何もかもが規則的で、人工的だ。


「ひょっとして、この渓谷は……」


 渓谷の形を思い出し、ボクはある想像をする。ここって多分、ボクが知っている施設だ。というか、ここにいる人たちの中でも、ボクしか知らない施設かも。


「待って。なにかくるよ」


 先頭を行くパロンが、足を止めた。


「ビビビ」


 前方の壁が勝手に、うごめいた。四本足のクモに変形する。


「アイアンゴーレム!」

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