第40話 岩山の探索は、木製ドローンで

 防衛は、アタックトーテムに任せる。ただ、気休め程度だ。このエリアの魔物は強いというから、壊されてしまうかも。


「コーキ、シロアリが来たよ!」


 とうとう、数が増えすぎたか。でも。

 

「大丈夫」


 シロアリには、大量の天敵がいる。


 鳥にクモ、トンボも、シロアリを捕食していく。どれだけ大きかろうと、皮膚の弱いシロアリではまともに相手をできない。


 なにより天敵なのは、黒い方のアリである。


 米粒くらいの黒いアリが、大型犬ほどに大きいシロアリにたかった。薄い表皮を、食い破っていく。


「アリが、アリを食べているよ」


「クロアリも増えたからね。アリの天敵は、実はアリなんだよね」


 増えすぎたシロアリは、動物たちが倒してくれる。


 後は、水場の確保に専念することにした。

 

「コーキ。こっちの池は、井戸並みに深く掘ろう。でないと全部、嵐で埋まっちゃうよ」


「パロンのいうとおりだね」


 領地を広げようにも、まず水源を確保しないと。たとえ池のように広げたとしても、砂で沼になっちゃうかもだし。


 井戸のように、地下まで続く貯水池を作ることにした。


「念のため、もう一体クレイゴーレムを出すよ。これで、水路も砂がかからないように、石で囲んでいく」


 嵐が来ない位置までブロックで取り囲みながら、別働隊のクレイゴーレムたちはアプレンテスの村まで引き返す。水を循環させるのだ。


「川に水をザバーって流せれば、よかったんだけどなあ」


「ちょろちょろじゃ意味ないよ、パロン。ある程度水源を確保してから、一気に流そう」


 今流しても、確実にまた枯れてしまう。また、作業をモンスターに邪魔されかねない。まずは、ダンジョンをなんとかしなければ。


 渓谷に到着した途端、水不足に悩まされるなんて。


「水は問題ないね。あとは……」


「入り口がわからぬ」


 井戸とは別に小さいため池を作って、クコが涼む。


 渓谷に到着したのはいいけど、お目当てのダンジョンがない。


「この嵐は、ダンジョンから発生しておる。ダンジョンの仕掛けを破壊すれば、嵐は収まるやもしれぬ」


 だったら、早く入口を見つけないとね。


「この嵐だと、ハトも飛ばせないよ」


 いくら召喚ハトでも、嵐に翼を取られて、パロンも振り落とされるだろう。

 

「ボクにいい考えがあるよ。【ファミリア】っていうんだけど」

 

 枝を身体から伸ばして、ボクは竹とんぼを作る。魔法石を結合させると、自動でブンブンと飛ぶ。まるで、ドローンのようだ。


「あっ、【ファミリア】なら、ワタシも持っているよ」


 パロンが、トンボを召喚した。


「じゃあ、手分けして探そう」


「待つがよい、コーキ。そのファミリアで、ダンジョンをどうやって探すのだ?」


 パロンのトンボは目があるゆえに、ダンジョンを探せるだろう。ボクの竹とんぼは、空を飛べるだけだ。


「それなんだけど、クコに手伝ってもらおうかなって」


 ボクは竹とんぼドローンを、四本用意した。リスが乗れるブランコを取り付けて、ツタで結んでドローンに通す。ブランコは、リスが乗っても問題がないように強化した。


「飛ばすよ。クコ、乗って」


「うむ!」


 クコが、ブランコに乗る。


 ボクは、ドローンを作動させた。


 クコを乗せたドローンが、宙に浮く。


「おお、これは楽しいぞな」


 ドローンは、クコの意思で移動を開始した。


 空を飛ぶ体験は、パロンのハトで経験済みだろう。


「魔法石による、カメラも取り付けた。これで、ボクもダンジョンの場所をさがせるよ」


「うむ。ではコーキ、お主はワシの目が届かぬ場所を重点的に頼む」


「わかった。出発するよ」


 クコを乗せた小型の竹とんぼドローンが、渓谷を飛ぶ。


 ボクは更に竹とんぼを増やして、自分でもダンジョンの入口を探す。


「なにか見えた、クコ?」

 

「絶景ぞな。これが本当に古代遺跡と言われても、信じるぞよ」


 たしかに、ロケーションは最高だ。嵐さえなかったら、観光名所になっていたかも。


「でも、川が枯れちゃっているね」


 おまけに、緑もなくなっている。草などが茶色くなったまま、干からびていた。


 ずっとこの絶景を見ていたいけど、楽しんでもいられない。この土地を再生できるかどうか、手がかりを見つけないと。


「このクレキシュ地域にあるダンジョンを調べれば、天候などもどうにかなりそうじゃが」


「そうなの?」


「クレキシュの民は、天候を操っていたと聞く。嘘か真かは、定かではないが」


 天候を操れないにしろ、この乾燥は異常気象に近い。

 だとすると、正常化しないとね。


「ダンジョンって、どこにありそう?」


「神殿と言えば、山の上じゃろう。たいていの宗教家は、天界に近い場所に寺院などを建てるしのう」


 地下にあったとしても、高いエリアから降りていくのだろうと、クコは推理した。


 これだけ高い山に住んでいたなら、地上にはなにかあるはずだと。


「ぬお!?」


「どうしたの、クコ!?」

 

「何者かから、攻撃を受けた!」

 

 クコの乗ったドローンが、落ちてきた。


 ボクはすかさず、クコをキャッチする。


 ドローンは落下し、壊れてしまった。


 よく見ると、ドローンが一つ切られている。


 焼けたドローンの断面を見ると、わずかに魔力を感じた。


「よく見えんかったが、山の頂上から攻撃を受けた気がしたぞい」


 ボクたちは、頂上に絞って、入口を探すことに。

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