第九話 幸せはどこに

カフェオレホットで一息ついた由希ゆきが話始めた。

「これから、私の話を聞いて欲しいのだけれど。

その前に、ちょっと気になることがあるの。そっちが先でいい?」


光輔こうすけは答えた。

「いいよ。朋皐ともおかさんの好きなようで。」


「それよ!どうして今日は、朋皐ともおかさん、なの?

いつものように、由希ゆきって呼んでよ。」


「!へっ?!?!?!?」

光輔こうすけ麻結子まゆこは、

それこそ異次元から来た人を見るような目で、由希ゆき凝視ぎょうしした。


「えっ!?何その反応!?光輔こうすけ、今日おかしいよ。」

光輔こうすけの腕にしがみつく由希ゆき


顔に怒りが出ているが、冷静に話す麻結子まゆこ

由希ゆき光輔こうすけ困ってるよ。

私、前に言ったよね。

由希ゆき光輔こうすけに告白するなら応援するって。

でも、あなたはしなかった。

今更、何!?」


朋皐ともおかさん、僕は朋皐ともおかさんを助けたいよ。

麻結子まゆこだってそうだよ。

朋皐ともおかさんはどうしちゃったの!?」


「えっ!だって、光輔こうすけと私、付き合っているよね?

私、4月に光輔こうすけに告白して、それからずーっと付き合ってるよね。」


由希ゆき!本気で言っているの!?

私は光輔こうすけの気持ちを知っていた。

由希ゆきもまんざらではないの、わかってたよ。

だから、最初に由希ゆきにはちゃんと話をしたよね。

でも、あなたは動くことをしなかった。

私は後悔したくなかったから動いたよ。」


朋皐ともおかさん、僕は4月に麻結子まゆこに告白された。

それから付き合っている。

朋皐ともおかさんからも、みんなからも、公認だと思っていた。

麻結子まゆこは僕には勿体無もったいないくらい素敵な人だよ。

これからも大切に付き合っていきたい。

でもそれとは関係無く、

朋皐ともおかさんには辛い思いをしてほしく無い。

友達として何か僕にできる事はないかな。」


由希ゆきは黙って聞くしかなかった。

いつの間にか、目が涙で潤んで、2人の姿がぼやぼやして来た。

別のパラレルワールドへ転移する、とはこういう事なのね。


自転車の男の子は助かった。


私も、誰か、助けて。






ファミレスからの帰り道、トボトボひとり歩く由希ゆき

まさにトボトボ、足取りが重い。

頭の中を思いがぐるぐる回って、周りが見えなかった。

道路を横切ろうとした時、車の接近がギリギリまでわからなかった。


キィィィイィ!急ブレーキの音。


車から人が降りてきた。


「危ないぞ、由希ユキ!ぼーっとしてるなよ。

、、、乗って行くか。

母さんも心配していたぞ。」


懐かしい、優しい、大好きな父親の笑顔だった。

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横断歩道はない。パラレルワールドはある。そして恋人の思いは無かったことに。 ムーゴット @moogot

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