原因不明

 私がこうして、解離性障害になった原因は環境要因にあるのかも知れないが、だとしたら、解離性同一性障害になるタイミングは幼少期からでも良かったはずなのである。

 健忘だと気がついたのはごく最近の話で、記憶力が鮮明な私が、偶に一部の記憶が吹っ飛んでしまうという事がはっきりわかったのが、中学二年生くらいからだろうか。当時の私は、忘れっぽいだけで大丈夫だと思い込んでいたのだが、さっきまでしていたことが思い出せなくなったり、家族で出かけた場所が全く思い出せなかったり、同学年の名前などが全く出てこなかったりと、それらの症状は今でも続いている。しかし、自分の中に二人の人格が存在するようになったのは今年であって、あまりにも突然の出来事だった。

 多重人格の当事者達は、口を揃えて「会話が出来る」「話し声がする」「すぐに交代できる」と言っているが、私はそれらが全く通用しない。私がよく通る道や場所などの一部の情報共有は可能だが、彼らはそれ以外の情報と会話は全く出来ない。なので、幼い子供のように扱わなければならないのである。正直な話、一部の情報が回ってきたからこのように書けるのであって、彼らがしてきたことなどに関しては全くわからない。当然ながら、その間の記憶も無い。

 尚之が言っていたのは、「最初、めっちゃ頭震えたんすよ。確か、振戦ってやつっすかね?」と。それは、私からしても非常事態である。これから推測するに、彼らはその振戦と繋がっていて、交代すれば彼らの情報のみに切り替わり、頭に重いメモリーを加えることでそれが発症しているのではと考えた。要するに、違う回線にするのには時間を要するという事だ。


 彼らも自覚しているかと思うが、きっと、どうして自分たちが存在して、私の代わりとして役に立っているのか不明だと思われる。私自身もそう感じている。

 そんなに自分自身へ負担をかけて過ごしたのか、あまり自覚と認識が無いのでよくわからないが、こうして解離になってしまった以上、彼らが存在する理由はしっかりとあるはずだ。



〈終〉

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裏に二人。 灯刳さん。 @lume_re2024

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