自称、高校生で天才らしい。

 一言で「陽キャ」。以上。


 いやいや、冗談。

 そう簡単に説明を終わらせてたまりますか。





 一見、名前からして高校生っぽくないのだが、彼はちゃんと自ら「高校生」と名乗った。その後、何年生くらいかと問われたら「わからない」と言ったが、多分、二年生くらいだと思われる。

 私という大人の身体なのにも関わらず、「自分は未成年なんでお酒飲めないんすよ。」と言った。変なところで律儀である。

 私の母親が買い物の為に外へ出る時、彼は一緒について行ったのと、彼にとって初めての外出だったので、高校生らしいテンションで菓子選びを楽しんでいた。そして、彼は何でもやりたがる性格で、荷物運びとか、洗濯物とか、家事全般を全てこなしてしまう不思議な高校生である。


「俺、天才なんで。」


 お前は、大門未知子か。


 ただし、彼は立派な男子なので、彼が最後に残したメモの字をよくよく見るとめちゃくちゃ汚い字だということが判明した。


 景叶けいとの事を「先輩」と呼び、私の事を「主」と呼ぶ。

 相当、学校に行きたがっていたのだろう。私と景叶の呼び方で、尚之なおゆき本人の意思が大体わかってしまう。


 天才と言う割には、陽キャらしく少々馬鹿な一面も持っている。どっちなんだ。

 彼曰く、「俺、あんまりそういうのわかんないからあれなんすけど。」と、例えば、人間関係において、母親の性格について、他者の発言についてなど、哲学とか結局難しい話をされると全くわからないらしい。きっと、尚之が高校に通うとしたら私よりも勉強は出来ないと予想しておく。


 彼に交代すると利点は上記述べたような内容だが、ただし欠点がある。

 彼は、景叶よりも滞在時間が短い。理由は、彼の体力消費に関係しているからだと思われる。外に出てくると、彼は色々な事をやりたがるというのもあれば、交代してすぐからずっとフルパワーな状態であり、元気では無い時が一切無いので、身体が疲れたと警告が出れば眠気を誘ってすぐに元に戻ってしまう。また、彼が直で出てくる事はほとんどなく、高確率で景叶から先に外へ行かせる。そうしてから、ちょっと遅れてやってくるヒーローのように交代する。景叶のように条件は存在せず、日中でも夜でも関係なく、出てきたら出てきたで私の身体を存分に使い回す。ある意味、彼はとても容赦ない存在なのかも知れない。


 また、彼は少々ファッションに対してこだわりがあり、景叶のようには行かない。どうやらカジュアル系が好みのようで、私にはそんな服を持ち合わせていないので、アバンギャルドな服を私が着ていると、何故かとても嫌らしい。それに加えて、私の髪が長いと、それはそれで怒られる。だがしかし、私は彼らの注文には一切受け付けずに過ごしてきた。


 まぁ、彼のお陰で何年振りかにカルピスが飲めたのでヨシとする。あの日、私の母親曰く、相当眠気があったようで、半分くらい残して寝てしまったらしい。

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