封筒〜マッチ売りの女の子〜

茶村 鈴香

封筒〜マッチ売りの女の子〜

夫の書類入れ たまたま目についた

うすもも色の封筒なんて

開けてみるもんじゃない

郵便局留め 開封済み


子猫のシール

みけ、しろ、はちわれ

とっても可愛くて

とっても憎らしい


横書きの丸文字

ありがとう またね

ハートのマーク

署名は下の名前だけ


一緒に入ってたのは

女の子たちが

仕方なく月々使うもの

私の使わない香り付き


「マッチを買ってくださいな」


ねえ

なんでよりによって

そんなものを?


ねえ

またねって

いつ会ったの?


ちょっとした火遊び

でも

本当に火事になったら


せきにんとれるの?


「マッチを買ってくださいな」


燃やしちゃおうか

この家ごと

私は燃えたりなんかしない


大きい猫をリュックに背負って

1番暖かいダウンコート着て

封筒の下で

台所の買い置きのマッチを擦ったら


家を出るわ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

封筒〜マッチ売りの女の子〜 茶村 鈴香 @perumi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ