22話.戻って来て

「……と言う事があったんだよ。」


「へえ……」


俺は今日あった試験について、グラフィンとセリルに話す。

俺はあれから試験が終わった後、一旦グラフィンの研究所に帰り胸の傷の治療、そして結果について二人に話した。

俺が合格した事を告げると、二人は自分の事の様に喜んでくれて、そして今までよく頑張ったと俺を褒めてくれた。表面上は隠していたが……ちょっと泣きそうになったのはここだけの秘密だ。


「ま、多少のトラブルがあったがなんにせよ合格出来て良かったの。ケイ。」


「そうだよ!合格出来ないよりは全然いいじゃん!」


「そうだけど……」


俺は照れ隠しをする為に話題を変える。


「所で入学式っていつ頃なの?」


「入学式……大体二週間位後かな。」


二週間……少し長いな。

…とグラフィンが俺の胸の傷の治療を終えた様で話しかけて来る。


「良し、傷は治っとるか?」


「…はい。もう痛みも感じません。」


「もし何か不調があったら儂に言うんじゃぞ。」


「あの……本当に何から何までありがとうございます。」


「ほっほ、礼には及ばんよ。」


人狼に貰った胸の傷をグラフィンに治して貰った。

回復魔法……セリル曰くかなりの高等技術らしく、並大抵の魔法使いじゃ使えないとのこと。とんでもない精度での魔力操作が必要らしい。

……マジでグラフィンって何者なんだ?

俺と訓練で戦った時も縛りで一種類しか魔法使ってなかったらしいし、勝った試合もあの最初の一回だけで後はゴリゴリに対策されて負けまくった。


「こっから何しよう…」


なので普通ならこの時間は療養して入学式に備えるのだろうが、グラフィンのお陰でその必要も無い。

つまり丸々二週間の空きが生まれたのだ。


「暇だなぁ……」




「……あ!暇ならちょっと私が明日王都行くのに付き合ってくれない?」


セリルがそう言って俺を誘う。


「ん、いいよー。」


どうせやる事ないしセリルに付き合って時間を潰そう。それにまだまだこの世界について知らない事も多いし俺もまた王都に行って見たいと思っていた。


「じゃ、明日支度して来るからそっちも何か準備する物あったら準備しててね!」


そう言ってセリルは一目散に部屋を出て行く。


「全く、元気が滾っとるな。」


「はは……」


「ケイが召喚されたのが余程嬉しかったんじゃろう、ここんところ一ヶ月ずっとこんな調子なんじゃ。だから儂が言えたことではないが……これからもセリルと仲良くしてやってくれんか。」


「…勿論ですよ。」


そして俺も、明日王都に行く為の準備を始めた。




・~・~・~・~・~・~


明日の朝。





「ケイー!準備出来た?」


「ああ、そんなに準備する物も無いからな。」


俺が朝起きて朝食を食べ終えた後、セリルが研究所に訪問して来る。


「……それ、結構似合ってるじゃん。」


「そうか……?」


試験を受けた時は学校側が指定した服だったので外出時にこの服を着るのは初めてだ。

何というか…洋風臭くて俺には似合わなそうだと思っていたがセリルにそう言ってもらえて少し安心する。


「ケイには今日とことん付き合ってもらうよー!」


俺とセリルは少し雑談しながら、王都へと転移した。

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魔王のいない異世界召喚~魔法すら自由に使えない勇者の話~ REN @8545

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