新章へ向けて 遂に対峙する私

「長い長い夜を越えて…」


最近は常に音楽を流して生活をしている。明らかにその方が落ち着くし、気分が落ち切ることがないという安心感があるからだ。未来と通話をしているこの時も例に漏れず、好きなバンドの曲を小音で垂れ流していた。


「ポツン、ポツン、ポチャン…」


それと同時に、窓の外では先程まで豪快に降っていた雨が急激に弱まり、残響する雷鳴と、雨雲が絞り残した僅かな雨粒が落ちる音。そして屋根に置き去りにされた水滴が傾斜を伝い、「弱々しくも」最後の存在感を解き放って、水溜りに消えていく音などが入り乱れている。


この「カオスティックな灰色」の中で共鳴する、音楽と雷鳴と雨音。それと同じくらい、私の心中もまさに「混沌」としていた。まだ記憶は取り戻せていないが、知らない男数人にいきなり襲われ、性的暴行を加えられたという事実を、改めて未来の口から「言葉」として受け取ったのだ。


絶対に犯人を探すんだという「怒り」から来るモチベーション、墓場まで持っていくであろう男性への嫌悪感、未来に対する謝罪の念、パンドラの箱を開けてしまったのかもしれないという後悔と、青井先生に対しての思い…。そのどれもが、全力で私の心を揺らしまくっている。


今までの私ならここで「スパーク」してしまっていたと思われるが、この時の自分は驚くほど冷静であった。それはこの状況で聴いていた、先述の好きなバンドの曲による影響が「多分」にある。


「破壊して構築する…」

これは、その愛するバンドを束ねる音楽家が、密着取材の際に答えていた「曲を作るとき」のマインドのようなものだ。


全く規模も違えば土俵も違う。でも最近はこの言葉が好きで、お守りのように思ってきた。私は私を取り戻すのではない。新しい自分を作るんだ。


「作るために、作ったものを壊している…」

何かに引き寄せられて「全てが繋がった」気がした。私は本当の意味で、次に進む事ができるかもしれない。



ここで上巻は終わりです。

下巻はこの後、ゆっくり執筆したく思います。

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モノクロ (上巻) 蹄鉄もにもに @monimoni4820

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