第56話 ギリ暴露
「あいつ、大丈夫かな」
レースから数日がたち、アファエルの家に行くとアファエルだけがいる。
アファエルが、そうボソッと言うので、
「どうしたのアファエル?」
と、わたしが聞くと、
「噴煙に包まれた時に、胸を強打したらしいんだよ」
心配そうに言うアファエル。
「えっ、病院には行ったのかな?」
レース中の事故だし。
「それが、しばらく様子を見ようってことで、今日行ったんだよ」
どうやら、痛みが引かなかったから受診したみたいね。
「そうなんだね」
「心配だなぁ」
うーんと、腕組みするアファエル。
「そうだよね」
後遺症とかに、ならないとイイけど。
「あのコースは、オレが現役の時にも、トラブルがあってさぁ」
首を振るアファエル。
「トラブル?」
なにが、あったのだろうか。
「そう。噴煙を回避しようとしたら、他の選手と接触して。そいつが引退した」
心の傷を話すアファエル。
「そんな事が………」
いつも、上手く飛んでいたイメージだったからね。
「あぁ。因縁かもな」
「うーん。それは、故意にやったことじゃないから、気にすることはないんじゃないの?」
いつも、フェアプレイしているし。
「そうかな」
苦笑いするアファエル。
「うん、そうだよ」
アファエルの手を握るわたし。
「ありがとう」
「それで、1人で病院に行ったの?」
と、わたしが聞くと、
「いや、プリムが一緒に行ったよ」
その頃
「どうだったの?」
みくこちゃんが聞くと、
「うん、アバラ骨が折れてるってさ」
診察室から出て来たさわちゃんが答える。
「それは、痛いわね。でも、あたしならそのくらいで骨が折れたりしないわ」
腰に手を置いて言うみくこちゃん。
「わたくしだって。フフッ、もうやめましょ
う」
つい、吹き出して痛がるさわちゃん。
「おう、どうだった?」
気になって、病院に来たアファエルとわたし。
「アファエル、来たのね。アトラフィルさんも」
わたしの顔を見て、表情を強ばらせる二人。
「やっぱ、気になってさ」
と、アファエルが言うと、
「骨が、折れてましたわ」
そう、答えるさわちゃん。
「うおッ。大丈夫か、ってか大丈夫じゃあないよな」
あせるアファエル。
「2週間くらいは、運動を控えるようにって」
うつむくさわちゃん。
「そうか」
少し、残念そうなアファエル。
「でも、骨折してても3位なんてスゴいじゃん」
わたしが、そう言うと、
「だよな! すごいぞさわ!」
アファエルも、調子をそろえる。
「ありがとうございます」
「みんな、そろっているな」
いきなり、男女二人が話しかけてくる。
「えっ!?」
いきなり、なんだろ。
「お前は」
どうやら、アファエルは知り合いみたいね。
「覚えてくれていたとは、うれしいぞアファエル」
口角を、上げる男。
「誰だっけ?」
首を、かしげるアファエル。
「うグ。アファエル、お前! 誰のせいで引退したと思っている」
病院なのに、大声を出すハッコフ。
エレベーターホールまで誘導するアファエル。
「冗談ですよハッコフ先輩」
ゲス顔をするアファエル。
「クッ。そんな口を、きけなくしてやるぞ」
顔を、歪めるハッコフ。
「へぇー。なんです?」
真顔になるアファエル。
「お前の親戚の二人。こいつらが入れ替わってレースに出ているって知ってたか?」
いきなり、本題に入るハッコフ。
「え? なにをおっしゃっているか、わからないですが」
首を、かしげるアファエル。
「あくまでも、シラを切るか。今日は、なぜ病院に?」
さわちゃんに聞くハッコフ。
「わたくしが、レースで胸を強打して」
と、さわちゃんが説明すると、
「そうだよな。あなたの名前は?」
さわちゃんに、迫るハッコフ。
「さわです」
正直に言うさわちゃん。
「ウソを言うな」
声を、荒らげるハッコフ。
「おい、さわだよな?」
アファエルが、確認する。
「はい」
「じゃあ、保険証とか身分証を見ればわかるから出せ」
しつこく言うハッコフ。
「あっ、はい」
免許証を出すさわちゃん。
「これ、お前のか?」
疑うハッコフ。
「そうです」
「ウソだ、ウソつくな!」
また、声を荒らげるハッコフ。
「あっ、証明出来る。腰にホクロがあればさわって言える」
そう、アファエルが言うと、
「えっ、もしかして脱ぐの?」
ちょっと、恥ずかしがる二人。
「いや、たくし上げてくれたらイイ」
あきれるアファエル。
「それじゃあ、二人で。せーのッ」
「わっ」
「おい、先輩。やっぱり、さわじゃねぇか」
ちゃんと、ホクロがある。
「ウソ………ウソだウソだ」
両手で、頭を抱えるハッコフ。
「行かせてもらうぞ。さあ、行こう」
「「うん」」
わたしたちは、病院をあとにする。
「ハハ、ハハハ、ぃい゛ぁハハハ」
狂ったように、笑顔になるハッコフ。
「とんだ、言いがかりだったね」
病院から出て、しばらく歩いてわたしが言うと、
「おう。なんか、オレのせいで気分悪くなったよな?」
アファエルが、さわちゃんに聞くと、
「いいえ。今、すっごくイイ気分よ」
満面の笑みのさわちゃん。
「うまくやったわね」
わたしが、親指を立てる。
「ありがとうね、アトラフィルさん」
ああ 彼にはレースで最速を目指してほしいの 見ているだけでキュンキュンしちゃうな♥️♥️(アファエルの軌跡) なばば☆ @bananabanana1E
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