ある溺死した少女の記憶
@hutoshi1992
おみずのゆめ
つめたいおててが
わたしをおしたぱしゃん
とおおきなおとがして
そらがまるくゆがんでいく
おみずはあおくてきらきらしてたひかりがゆらゆらしておおきなわっかになった
くるしい
っていおうとしたけどおくちにおみずがいっぱいはいってきてげほげほするひまもなく
つめたいおみずがいっきにからだをのみこんだ
おおきなぱしゃん
というおとがして
そらがぐるぐるまわった
あたまがくらくらする
あおいそらも
おひさまも
おみずのむこうでゆがんでいるおくちにおみずがはいってくる
たすけて
ってさけびたいのに
こえがでない
あしが
うごかない
からだがしたにひっぱられるつめたい
くらい
くるしいおみずが
せなかに
かおに
いっきにおしよせてくる
げほげほ
ってしたいけど
それすらうまくできない
どうして?
おもいっきりてをのばした
でも、そこにはなにもない おひさまも
そらも
ぜんぶとおくてつかめない
まぶたのなかでひかりがちらちらするはぁ、はぁ
っていきしたいけど
おくちにおみずがなだれこんでくるだけいきたい
っておもっても
てあしはどんどんうごかなくなる
むねがやけるみたいにあつい でも
からだはどんどんつめたくなる
おめめがあけられない
あおいそらがきえてのこるのはくらやみだけ
あしが
てが
もがくたびにおみずがわらう
からだがかたくなっていく
むねが
ぱんぱんにはりつめて
おおきなばくはつをおこしそう
おくびをしても
おくちから
おみずがとめどなくあふれるだけ
わらってるの?
おみずがわらってるの?
それとも、ママがわらってるの?
こえがきこえない
たすけて
っていおうとしたのにのどがひゅうひゅう
あわがぷつぷつ
やがてからだがふわりとうきあがるでも
それはもう
わたしじゃない
てが
あしが
もうわたしのものじゃない
そのときにわかったわたしをひっぱっているのは
このおみず
わたしをしずめたては
わらっていた
きえていくこころのなかにつよくきざまれるひとつのことママが
わたしをおした
わすれられない
そのつめたいてのひえたきもち
それがのこっているから
わたしはここにいる
わたしはもう
くるしくない
でも
あなたをおぼえさせるために
このおみずでまたつかまえる
もがき
けり
さけぶひとを
またふかく
ふかくわたしのそばへつれてくる
おみずのなかでひとがあえぎ
あばれるすがたがみえる
わたしはみている
あなたが わたしにしたことをずっと
おもいだしてもらうために
わたしはどんどん
したへおちていく
なんで?うえをみあげるけど
おみずはふしぎだ
つめたいのに からだをやさしくつつむ
でも
わたしはさむい
ひとりだから
さむい
たのしい?
ママがいった あのこえがまだのこってる
でも
たのしい
ってなんだった?
わたしにはもうわからない
さかながちかづいて
わたしをちょん、とつついた
あそぶの?
こたえはない
ただ
わたしのからだをすこしずつ
さらっていくだけ
なんで?
そのことばだけがひびいてる
おみずのそこから
そらをみる でも
もうひとりじゃない
わたしをみないひとたちをみつけた
わらっているひとたちをみつけた
てをのばしても
ふりむかないひとたちがいる
だからわたしは
てをのばす
あしをつかむ
おおきなうみのなかへつれていく
ひとり
またひとり
おみずのなかにきたひとたちは
わたしのなかで
しずかになっていく
うみはしずかだだけど
わたしはさけぶ
ひとのこえは
わたしのおみずにきえていく
だれがたすけをよんでもおおきななみがおおいかぶさる
そのなみはわたし
そのおおきさは
わたしのむね
ひとのこえはもういらないわたしがあのひきいた
たのしい?
それをいま
おみずのなかできかせている
ひとりきえるたびわたしはおおきくなる
てをのばすたび
わたしのなみがつよくなる
おみずのなかはやさしいけど
わたしはやさしくない
おひさまがわらっていても
わたしはわらわない
わたしのなみをかわせるひとはいない
みずは
みんなのなかにしみこんで
わたしのこえをつたえるから
あなたがつめたいなみをかんじたら
それがわたしわらいながら
ふかみにすすむひとがいたら
それをつれていくのがわたし
おみずのそこにきらきらがひかる
それがなみをよぶ
それがわたしがいるしるし
神奈川県沖で不審な溺死事故多発――地元住民に不安広がる昭和46年7月25日
神奈川県三浦半島の海岸一帯で、ここ数年にわたり不審な溺死事故が相次いでいる。地元住民や観光客の間で不安が広がる中、警察は慎重な調査を進めているものの、事故の原因については依然として謎に包まれている。
今年だけでも、逗子海岸から葉山周辺にかけての海水浴場で、すでに7名が溺死。被害者は幼児から大人まで幅広い年齢層にわたり、いずれも救助が間に合わず命を落とした。これらの事故の共通点として、いずれも「足元をつかまれるような感覚があった」という目撃情報が複数の現場で寄せられている。
現場の証言
先月、葉山の海水浴場で家族連れの男性が溺死した際、近くにいた女性は「波が静かな場所で突然、彼が足を引きずられるようにして沈んでいった」と証言。別の目撃者も「助けを求める声を聞いて駆けつけたが、すでに姿が見えなかった」と語った。
また、事故が起きた場所には深い潮溜まりや危険な流れが確認されておらず、専門家たちは原因解明に頭を悩ませている。ある地元漁師は、「こんなことは昔から聞いたことがない」と話しつつ、「子どものころから、あそこには入るなと言われていた」と語り、かつてからの不気味な噂に言及する。
地元で語られる「ある噂」
地元住民の間では、この溺死事故がある噂話と関係しているのではないかという声が上がっている。ある住民は「昔、このあたりで親に溺れさせられた子どもがいると言われていた。怨みを抱えたその魂が、波の下から人を引きずり込んでいるのかもしれない」と話す。
地元の漁師町では「波間でささやき声が聞こえたら注意しろ」「急に冷たい流れを感じたらすぐ岸に戻れ」という言い伝えがあるが、これが今回の事故に関係しているかどうかは不明だ。
県警の見解
神奈川県警は、これまでの事故について「いずれも溺死が死因であり、事故として処理している」としつつも、複数の事故現場に共通する奇妙な証言については現在も調査中であると発表。一部の目撃情報については「現時点では科学的な裏付けがない」としている。
住民の不安と観光業への影響
海水浴シーズンを迎える中、地元観光業にも影響が出始めている。例年多くの人で賑わうはずの海水浴場は今年、訪れる人が減少傾向にある。ある観光業者は「こうした噂が広まると、観光地としての評判に影響する」と懸念を示している。
一方で、住民たちからは「本当に安全なのか」という声が根強い。子ども連れの母親は「近くで遊ばせるのが怖くなった」と語り、今後の対策を求める声も多い。
引き続く調査と対策の必要性
原因が特定されないまま事故が続けば、地元住民の不安は増大し、観光業への影響も避けられない。県警や地元自治体は、海岸の安全対策を強化するとともに、海難事故の未然防止に向けた取り組みを求められている。
ある溺死した少女の記憶 @hutoshi1992
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