あの空よ、消えてなくなれ

@kamui3373

プロローグ

この世界はナニカに支配されている。

僕‐阿久津義和‐はそう思っている。

そう思い始めたのは2年前のことだった。

今思えば、あれは人生の汚点、黒歴史であるが、とあるシリーズの本に熱中していた僕はそのシリーズの新刊を欲しいと思っていた。しかし、お金が足りない上に親にも頼れない。次のお小遣い日は22日後…。

だから、万引きしようとした。

そう思った瞬間、まるでナニカに強制的に引き離されるように本屋から遠ざかっていた。

その日からこの世界を疑問に思った。

例えば、この世界では犯罪が全く起こっていない。100年前は毎日のように横行していたという。でも、今は全くない。むしろ、罪に対する罰を定めた法すらない。人は欲望に塗れた生き物だ。自分も欲望のために悪いことをしそうになったから分かる。でも、どんな犯罪も起こっていない。もしかして、僕のように罪を犯そうとしたが強制的にそして未然に防がれたのではないだろうか。

例えば、この世界では戦争が全く起こっていない。100年前までは戦争によって多くの人が死んでいた。でも、忽然と無くなった。「核兵器」という概念があるのは知っている。しかし、どの国も核兵器は保持しない事を宣言している。思えば核兵器を持つことで国力が高くなり、外交に有利になるのは一目瞭然だ。核兵器などを持たないほうがおかしい。

その事を友達に言っても怪訝な顔をされただけだった。

その事を先生に言っても、

それは事実なんだからいいだろう、そんなことより勉強したらどうだ?

と一蹴された。

だから、この世界を疑問に思っている。

でも、口に出しはしない。

僕はこれを当たり前と認識しなければならない。

そうして生活しなくてはならない。

そう、思いながら、高校の入学式に向かった。

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