先代勇者の孫、異世界ゆるり旅は問題だらけ〜魔王軍四天王のお姉さんとスローライフを目指すも、ここでまさかの祖父(先代勇者)の変態紳士っぷりが明らかに。僕の平穏な異世界ライフはどこ行った?〜
界閃ハルカ
1章 騙され異世界に
第1話 本当にあった異世界
寒い冬のある日、僕こと
関西から飛行機に乗り、北海道まで道のりはすごく長い。だが、僕にとってはもともと一人で移動したりするのは好きだし、あまり苦痛に感じなかった。
しかし問題はここからだ。
いざ、じいちゃんと会うと聞かされる永遠とも呼べる長い時間繰り返される妄想話。
これが移動よりも疲れるのだ。
「どうじゃ。お爺ちゃんはな昔、こことは違う世界に行ったんじゃ。世界を平和に導く勇者として」
「はいはい、もう同じ話を3回も聞いたよ」
「啓太……信じてないじゃろ」
「そりゃそんなアニメや漫画みたいな話を信じろって言うほうが無理あるよ」
「こう見えてお爺ちゃんは向こうでモテモテ――」
僕は立ち上がると、雪が積もる蔵を指差した。まあ、簡単に説明するとじいちゃんの家は昔ながらの日本家屋だ。
雪対策が必須となる北海道では非常に珍しいらしいが、どうやらご先祖さんが日本家屋マニアだったらしくこの家を建てたとか。
もちろん二重窓とかにはなってるけど、隙間風は入ってくるし、暖房があっても結構寒かったりもする。
そんな家の中央には広い庭がある。
池の表面はカチカチに凍るものの、その中では鯉が優雅に泳いでいるのだ。
庭にはもう一つ。立派な蔵があるのだ。
このじいちゃんの家に来た時、蔵で僕は不思議な光景を見た。鉄製の扉から白い光が漏れ出ていたのだ。
もちろん不思議に感じた僕は扉を開けた。
しかし変わった様子は何一つなかった。
中には散らかった酒樽と布に覆われた大きな鏡だけだった。
「じいちゃん。僕が来た時、あの蔵から光が――」
「そうじゃったか……もうそんなに時が経って……」
じいちゃんは空を見上げ小さく呟いた。
それはどこか寂しそうだった。
目には涙も浮かべている。
もしかしたら僕がまだ小さかった頃に亡くなったって聞いたばあちゃんを思い出して……。
「じいちゃん?」
「おお、すまんの。少し昔のことを」
「それってばあちゃんのこと?」
「まだ元気に暮らしているかの……」
「え? ばあちゃん生きてるの?」
とうとうじいちゃん現実逃避を。
色々と悪化してるな。
僕が少しでもサポートしなければ。
「当たり前じゃ。向こうの世界で元気に――」
向こうの世界?
ああ、じいちゃんの妄想話の世界かな。
ここは話を合わせておこう。
「いやいやいや! 僕、父さん母さんから幼い頃に亡くなったって。それはもう満足そうな顔で」
「それ嘘じゃ。ばあさんは何年経っても容姿が変わらんべっぴんさんじゃ。もうナイスバディでピッチピチよ」
「じいちゃん頭おかしくなった?」
つい本音が漏れた。
正直、じいちゃんの言葉を一つひとつ理解できていない。久しぶりに家に遊びに行けば、蔵から光が漏れ出す不思議な光景を見るわ、じいちゃんの妄想話に付き合わされるわ、おまけにばあちゃんが実は生きてるだって!?
どういう妄想話なんだよ、これは。
じいちゃんは立ち上がると、僕の手首を握った。そして蔵まで連れてこられたのだ。
しかし特に変わった感じはない。
「えっと……何で蔵?」
「すまんの。啓太」
「え!? それって何の謝罪――」
手首を掴まれた僕はなす術もなく蔵に投げ入れられた。見た目ヒョロガリのじいちゃんからは想像もできないほど力で投げ入れられたのだ。で、予想通りというべきか、ガチャンと音を立て扉を閉められる。ガチャガチャって音も聞こえるから鍵も閉められたに違いない。
「じいちゃん冗談はやめてよ」
「本当にすまんの。もう少しで向こうの世界に」
「いや、マジで意味わかんねぇから!!」
焦りから今までじいちゃんには使ったこともない言葉遣い。
ドンドンッと扉も必死に叩いた。
「向こうの世界で困ったことがあれば
「そんな情報何の役に……って、それより早く開けろじじい!!」
「あ、今、お爺ちゃんにじじいって!」
その時だった。
布が被さっていたはずの鏡から白い光が放たれたのは。蔵だというのに台風が接近したかのような暴風が僕を襲う。
そして白い光はだんだんと強くなる。
あ、これ死ぬパターンだ。
僕はなぜかそう察したのだ。
立つことすら困難で風は強さを増すばかり。
そして僕はあの鏡の中に吸い込まれる形となった。
はぁ……まあ、アニメや漫画でよくある異世界レッツゴー的な可能性も考えられるけど、間違いなく向こうで死ぬよね!
なんやかんや役目を与えられるのだけは本当に勘弁して欲しい。
でも、これで本当に異世界に着いたら、あながちじいちゃんの妄想話も嘘じゃなかったってことだ。
その時は素直に心の底から謝ろうっと。
―――――
初めまして!
この度、カクヨム様にて初投稿をさせていただく
自分が本当にやりたかったこと、それが小説を書いて皆様に読んでいただき書籍化したい、そういう夢に挑戦してみようと踏み切ったのが本当に最近でもっと早く行動すべきだったと思うばかりの作者です。
これからはその気持ちを力に変えて、皆様に楽しんでいただけるように努めてまいりますので、応援のほどよろしくお願いします!
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