異世界恋愛クリニックへようこそ!~ゾンビ彼氏と写真~
冒険者たちのぽかぽか酒場
第1話 「先生!私、どうしよう?けんかして炎系魔法を唱えて、彼氏を焼き殺してしまいました!」異世界らしいね~
異世界恋愛クリニックへ、ようこそ!
「恋のカウンセラー」
それが、この男につけられたあだ名。
仲間で開いた平屋のクリニックで、働いている。
今日、朝早くから相談にやってきたのは、成人年齢をすぎた女性。
いや、待て。
若いなんて言って、良いのか?
セクハラっぽいぞ?
「反省して注意」
そうそう。
若い世代の悩みの解決は、むずかしい。
男の世代とは、考え方などがちがうから。
言葉づかいにも、注意しないと。
「…はいはい。そうですよね。そういう悩みをかかえている人、多いんですよ。気になさらずに」
そんな軽々しい言い方は、困る。
「気にされないほうが、良いのでは?」
その軽い一言で突き放されたと感じ、かえって落ち込んでしまう人もいる。
こういう声がけも、いけない。
「がんばってくださいね」
悩む人は、傷付くばかり。
「…どうして?私は、いつもがんばっているのに!なのに、がんばりなさい?私が、がんばっていないみたいじゃないの!」
そうも、思われ。
相談にきた女性の声は、さみしそう。
「私、恋の罪をかかえてしまいました…」
聞けば、大げんかをして炎系魔法を唱え、彼氏を焼き殺してしまったという。
「先生?」
「何でしょう?」
「こういうことって、良くあることなんですか?」
「こういうこと?」
「ですから、あのう…」
「はい」
「カップルがケンカして、攻撃魔法を唱えて、一方を殺してしまったり…」
「…ありますね、たまに」
「たまに?」
「あるんですよ」
「あるんですか?」
「ええ。ファンタジーでは、たまに」
「私…。どうすれば良いんでしょう?」
「診断書では…」
「何でしょう、先生!」
「あなた、死者を生き返らせるリザレクションの魔法を使えるそうですね?」
「ええ、まあ…」
「その魔法を唱えて、彼氏を生き返らせたらいかがです?」
そう、女性に声をかけた瞬間。
女性の顔が、パアッと輝いた。
「あ!そのやり方があるって、気が付きませんでした!帰ったら、やってみます!」
気付きなさいよ。
さすが、異世界ファンタジー。
後日、相談にきた女性から、クリニックまで写真付きのハガキが届けられた。
「先生!彼氏が、ちゃんと生き返りましたよ!」
…げ。
ゾンビと一緒に、女性がラブラブポーズを決めていた。
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