5.聖騎士と骨騎士
アンデットの城の訓練場。骨だけの騎士、ボーンハートは剣を振るっていた。彼
の動きは鋭く、まさに一流の剣士という風格だ。
「ふぅ」
ボーンハートは汗をかかない額をぬぐった。習慣だ……。
「これで姫様の心を射止めてみせる」
そこへ、姫とアルフレッドが楽しそうに話しながら通りかかった。
「んんっ!?あの小僧は誰だ!?」
ボーンハートは目……いや、眼窩を見開いた。
訓練を終え、城内を歩くボーンハート。噂では、あの小僧が姫様の婿になるという。
「許せん!決闘を申し込んでやる!」
ボーンハートは意気揚々と姫の居室に向かった。ノックをすると、中から返事があった。
「はい、どうぞ」
扉を開けると、そこにはアルフレッド一人がいた。
「あれ?姫様は?」
ボーンハートは困惑した。
アルフレッドは明るく答えた。「
姫様なら、ちょっと用事で出かけましたよ。僕が代わりに伝言を預かりますね!」
ボーンハートは一瞬言葉を失った。目の前にいるのは、まだあどけなさの残る少年だった。
「お、おい。お前が例の聖騎士か?」
「はい!アルフレッドです。よろしくお願いします!」
アルフレッドはにっこり笑った。
ボーンハートは拍子抜けした。
「え?こんな子供と決闘するのか…?」
「決闘?何のことですか?」
ボーンハートは咳払いをした。
「い、いや…なんでもない」
アルフレッドは目を輝かせた。
「わぁ!すごい鎧ですね!僕も将来あんな立派な騎士になりたいです!」
ボーンハートは思わず胸を張った。
「ふむ。まあ、長年の鍛錬の賜物だ」
「教えてください!」
アルフレッドは両手を合わせて懇願した。
「えっ?まあ……いいけど」
こうして、二人の予想外の特訓が始まった。
訓練場では、ボーンハートがアルフレッドに剣術を教えている。
「そうだ、もっと腰を落とせ!」
「はい、ボーンハートお兄ちゃん!」
「お、お兄ちゃん!?」
ボーンハートは驚いて後ずさりし、転んでバラバラになってしまった。
アルフレッドは慌てて駆け寄る。
「大丈夫ですか!?ごめんなさい!」
ボーンハートは苦笑いしながら体を組み立て直す。
「い、いや……気にするな」
そこへ姫が現れた。
「まあ、仲良くなれたみたいね」
「ひ、姫様!これは…」
アルフレッドが嬉しそうに叫んだ。
「姫様!ボーンハートお兄ちゃんが剣術を教えてくれてるんです!」
姫はくすくす笑った。
「お兄ちゃん?まあ、素敵な関係ね」
ボーンハートは顔を赤らめた……はずだが、骨だけなので分からない。
「いや、その……」
姫は優しく微笑んだ。
「アルフレッドのことを見守ってくれてありがとう、ボーンハート」
ボーンハートの心(魂?)が温かくなるのを感じた。
その夜、ボーンハートは自室で独り言を言っていた。
「まったく、あの小僧め」
しかし、その表情は柔らかだった。
「……可愛い弟が出来たみたいだな」
翌日、城の廊下。アルフレッドが駆けてくる。
「ボーンハートお兄ちゃーん!今日も特訓付き合ってー!」
ボーンハートはため息をつきながらも、嬉しそうに答えた。
「しょうがないな。さあ、行くぞ!」
こうして、アンデットの城に奇妙な兄弟が誕生した。骨の兄と、聖騎士の弟。
姫は二人を見守りながら、こっそり日記に書いた。
『今日も城は平和です。でも、明日は何が起こるかわからないわ。楽しみね』
次の更新予定
1.聖騎士とアンデットの姫君 捲土重来(すこすこ) @sukosuko18
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