4.聖騎士とアンデットアニマル
アルフレッドは城の中庭を歩いていた。突然、彼の足元を白い影が駆け抜けた。
「わっ!な、なんだろう?」
よく見ると、それは骨だけの犬だった。犬は尻尾の骨をカタカタと鳴らしながら、アルフレッドの周りをぐるぐると回り始めた。
「わぁ!可愛い〜!」
アルフレッドは目を輝かせた。
「おいで、おいで〜」
彼が手を伸ばすと、骨犬は警戒せずに近づいてきた。アルフレッドが頭を撫でようとすると骨犬は抵抗することなく撫でられる。
「可愛いなぁ。骨抜きにされちゃいそう」
そこへ姫が現れた。
「まあ、ボーンズがあなたに懐いているわ」
「ボーンズ?この子の名前ですか?」
姫はくすくす笑った。
「ええ。うちの城のマスコット犬よ」
その時、中庭に面した窓から、骨だけの猫が飛び降りてきた。見事に着地……かと思いきや、バラバラに分解してしまった。
「うわっ!大丈夫?」
アルフレッドは慌てて駆け寄った。
骨猫はケロッとした様子で、自分で組み立て直すと、のんびりとアルフレッドに擦り寄ってきた。
「この子はスカルニャン」
姫が説明した。
「少しだけ、バラバラになりやすいの」
アルフレッドは両手を広げて叫んだ。
「すごい!みんな可愛い!」
突然、遠くから鳴き声が聞こえてきた。
「ヒヒーン!(おーい、忘れないでくれよ〜)」
「あ!ジャック!」
アルフレッドは声のする方に走り出した。
ロバのジャックが、城の柵の外で首を長くして中を覗いていた。
「ごめんね、ジャック。君のことを忘れてたわけじゃないよ」
アルフレッドは柵越しにジャックの首筋を撫でた。
「ヒヒーン(まったく、新しい友達ができたからって…)」
ジャックは少し拗ねた様子。
そこへボーンズが駆け寄ってきて、ジャックの足元でカタカタと鳴いた。
「わお!(こんにちは、新しいお友達!)」
ジャックは驚いて後ずさりした。
「ヒヒーン!?(うわっ、喋る骨!?)」
アルフレッドは大笑いした。
「仲良くなれそうだね、ジャック!」
しかし、その時、城の中から悲鳴が聞こえてきた。
「きゃーーー!誰か、スカルニャンを止めて〜!」
姫が慌てて説明した。
「大変!スカルニャンが台所から骨つき肉を盗んで逃げ出したみたい!」
アルフレッドは胸を張った。
「よし、僕が捕まえてきます!」
彼は城内に駆け込んだが、すぐに戻ってきた。
「あの……姫様?スカルニャンってどの方向に逃げました?」
姫は額に手を当てながら答えた。
「右の塔よ。でも気をつけて。あの塔には……」
しかし、アルフレッドはすでに走り去っていた。
「……落とし穴がたくさんあるの」
姫はため息をついた。
数分後、塔からアルフレッドの悲鳴が聞こえた。
「うわぁぁぁ!」
そして、どすんという大きな音。
姫とペットたちが塔に駆けつけると、アルフレッドが落とし穴の底で、スカルニャンと骨つき肉を抱きかかえていた。
「あははは、捕まえました!」
アルフレッドは少し痛そうだが、満面の笑みで言った。
姫は呆れながらも微笑んだ。
「まあ、あなたらしいわ」
ボーンズは穴の縁でカタカタと鳴き、ジャックは柵の外から鳴き声を上げた。
「ヒヒーン(俺も中に入れてくれぇ!)」
アルフレッドは親指を立てて答えた。
「平気平気!ねえ姫様、ロープを持ってきてくれません?」
こうして、アルフレッドとアンデットペットたちの大冒険は幕を閉じた。
その日から、城のペットたちはアルフレッドのことを「骨抜きにされる聖騎士様」と呼ぶようになったとか。
そして、ジャックは……相変わらず外の柵で首を長くしていたという。誰か、このかわいそうなロバを中に入れてあげる人はいないのだろうか?
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