3.聖騎士とゾンビメイドたち
アンデットの城に朝日が差し込む。アルフレッドは伸びをしながらベッドから起き上がった。
「よ〜し!今日も一日がんばるぞ〜!」
彼が元気よく廊下に飛び出すと、そこにいたゾンビのメイドが悲鳴を上げて逃げ出した。
「きゃあああ!聖騎士様だわ!」
アルフレッドは首を傾げる。
「えっ?どうしたんだろう?」
姫が朝食を取っている食堂に向かうと、そこでも同じことが起こった。ゾンビメイドたちが次々と悲鳴を上げ、皿を落としたり、配膳車にぶつかったりしながら逃げ惑う。
「おはようございます、姫様!」
アルフレッドは明るく挨拶した。
姫は困惑しながらも微笑んで答えた。
「おはよう、アルフレッド。随分と賑やかね」
「はい!みんな元気いっぱいですね!」
アルフレッドは周りの騒動に気づいていない。
姫は小声で説明した。
「あのね、実はメイドたちがあなたを怖がっているの」
「えっ!?僕のことを?どうしてですか?」
「だってあなた、聖騎士でしょう?」
アルフレッドは胸を張った。
「はい!見習いですけど」
姫は続けた。
「聖騎士はアンデットにとって天敵なの。だから、みんな怖がっちゃって……」
「そうだったんですか!」
アルフレッドは驚いた顔をした。
「でも僕、そんなに強くないですよ?コネで入隊しただけなので、聖騎士としての力は何もないですし」
「アルフレッド、それはあまり言わない方がいいわよ」
その時、年老いた骸骨の執事が震える手で朝食を運んできた。
「お、おはようございます……聖騎士様……」
執事は怯えながら言った。
アルフレッドは笑顔で答えた。
「おはようございます!いつもありがとうございます!」
その瞬間、執事は気絶してしまった。
「わっ!大丈夫ですか!?」
アルフレッドは慌てて執事に駆け寄る。
姫はため息をつきながら言った。
「アルフレッド、あなたの優しさが逆効果みたい」
「えぇ!?じゃあ、どうすればいいんでしょう?」
姫は考え込んだ。
「そうねぇ……あなたが無害だってことを証明できればいいんだけど」
アルフレッドは目を輝かせた。
「分かりました!僕に任せてください!」
彼は城中を走り回り、出会うゾンビメイドたちに声をかけ始めた。
「みなさ〜ん!僕は怖くありませんよ〜!」
しかし、彼が近づくたびにメイドたちは悲鳴を上げて逃げ出す。廊下は大パニック。花瓶が倒れ、絵画が歪み、骨の装飾が崩れ落ちる。
「違うんです!本当に大丈夫なんです!」
アルフレッドは必死に説明しようとするが、逆効果だった。
そのとき、彼は階段を踏み外し、転げ落ちてしまった。
「いたたた……」
アルフレッドは頭をさすりながら起き上がる。
驚いたことに、転んだ姿を見たメイドたちが少しずつ近寄ってきた。
「聖騎士様……大丈夫ですか?」
一人のメイドが恐る恐る尋ねた。
アルフレッドは笑顔で答えた。
「はい!大丈夫です。ちょっと痛いだけで…あれ?」
彼が立ち上がろうとすると、足を捻っていたらしく、またこけそうになる。慌てて近くのゾンビメイドにしがみついた。
「うわっ!ごめんなさい!」
驚いたことに、メイドは逃げ出さなかった。むしろ、アルフレッドを支えようとしている。
「聖騎士様……意外と頼りないんですね」メイドが小さな声で言った。
周りのメイドたちもくすくす笑い始めた。
アルフレッドは照れくさそうに頭をかいた。
「はい……僕、ちょっとドジなんです」
そこへ姫が駆けつけてきた。
「アルフレッド!大丈夫?」
彼は笑顔で答えた。
「はい!むしろ、良かったです。みんなと仲良くなれました!」
姫は驚きながらも、嬉しそうに言った。
「まあ、あなたらしいわね」
こうして、アルフレッドの"恐るべき"聖騎士としての評判は、"ちょっと頼りない"けど"優しい"聖騎士に変わった。
ゾンビメイドたちは彼を怖がるどころか、むしろ世話を焼きたくなるような、不思議な存在として受け入れ始めたのだった。
その日から、城の廊下には聖騎士を追いかけ回すゾンビメイドたちの姿が…いや、正確には転んだ聖騎士を心配そうに介抱するゾンビメイドたちの姿が見られるようになったとさ。
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