第58話 ある意味相性抜群の2人
さて、それでは高彦の新たなるパートナー、
その経緯を順番に話していこう。
それは今を遡ること十年前の話。彼女は、運命の男性と出会った。
それは彼女の一方的な思いではあったものの、
しかし、所詮は子供の淡い恋。上流家庭としての日々に忙殺された
故に、二人は十年間再会することなく違う人生を歩むことになる。
その十年の間、
変わるきっかけは高彦の実家が許嫁の申し込みをしてきた事に端を発する。
「そんなわたくしが、高彦さんを一途に思い続けてきたなんて偉そうな事は申せません。ですが、幼い頃に抱いた淡い想いは、再会したその日に再び花咲くことになりました」
詩人のように語る彼女の口からは、高彦の良いところを美辞麗句のように並べ立てて止まることがない。
「よっぽど高彦君の事好きなんだね
あまりにも高彦を褒めちぎる
その愛は盲目的なのかとも思えるほど。
だが彼女は非常に頭の良い女性だった。高彦の良い部分だけを見て
「高彦さんは確かに女性への配慮に欠ける部分があります。ですが、それらを受け入れてフォローするのが真なる妻の勤めです。夫を成長させ、自らの成長の糧にもするのが理想のカップルですわ」
「ほんと、
彼女の思いは本物だ。清も濁もあわせのみ、良いところも悪いところも受け入れて愛する覚悟があった。
ほとんど今日が初対面である俺たちには、それがどれほどのものであるか計る術は無い。
しかし、高彦と
「二人はとっても相性が良いんだね」
その心中はどのようなものか。優しく微笑む彼女の表情はどこか誇らしげだ。
誇らしげ……いや、違うか。誇るというよりは安心といった方が良いのかもしれない。
この感情を言い表す言葉は中々見つからない。
嫉妬とも未練とも違う、元彼がちゃんと幸せになっていることへの安心感というやつではないだろうか。
ずっと気がかりだったのだろう。
高彦は確かに
いや、誠実さの方向が致命的にズレていたのだ。
好きになろうと努力して、その想いは届かなかった相手だ。
未練とか、浮気心とか、そういう下世話な話ではない。
単純に元彼の幸せを願う優しさ。それが
それを不誠実と断じるヤツは単に心が狭くて余裕のないだけの話だ。
俺とカスミちゃんの絆の前ではそんなものは無意味に過ぎる。
今が幸せだからこそ、自分が本物のパートナーと結ばれたのは高彦のおかげだからこそ、その幸せを願う想いになんの矛盾も存在しないのだ。
話を戻すと、
それは
そういった点において
おっとりした性格に見えるが二人の関係性においては
それは案外高彦にとってちょうど良かった。
価値観が同じ上流階級だから金目当てとか立場を利用しようなんて事もない。
外の世界で自由にやってきた高彦とは真逆で、一流の世界で一流の教育を受け続けてきた彼女は人を動かす事に慣れている。
適度に男を立て、控えめでありながらも決していいなりにはならずにパートナーを引っ張る関係性。
それは高彦にとって案外相性の良い女性なのかもしれない。
そんな彼女と話が盛り上がること数時間。
高彦の彼女お披露目パーティーの形を取った宴会は盛り上がりのピークを迎えた。
◇◇◇◇◇◇
それから数日後、
色々とプライベートな話もするようになり、その中にはかなり突っ込んだ話、つまり夜の営みについても色々情報交換をするようになったらしい。
むしろ高彦もそうするべきだと思っているらしい。
だが当の高彦本人にその気はないらしく、一途に
将来的には分からないが、とも言っていた。
好きな人なんて無理して増やすものでもないし、俺だってたまたまアヤちゃんと
そんな折である。
呼び出された先は駅前のカフェだった。
ここはアヤちゃんがバイトしてるお店だな。
ちなみにアヤちゃんのバニーガールバイトはあれ以来時々通っている。
彼氏としては半分いかがわしいお店に恋人をバイトに見送るのは少々心配なところはあるが、お店のシェフがかなりの達人で非常に勉強になるのでキッチンでという条件で入ることになった。
しかし超絶可愛いアヤちゃんを所望する客も多いからホールに入って欲しいという要望を躱すのが大変だと、時々困り顔で愚痴っている今日この頃だ。
それはともかく、俺は呼び出されたカフェに辿り着いて
「あ、ゆう君、待ってたよ」
後ろからアヤちゃんの声がして振り返ると、彼女はお盆にのせたミルクティーを運んでいるところだった。
「カスミンあっちの席にいるから。案内するね」
「ありがとうアヤちゃん」
アヤちゃんは既に注文済みだったという俺のミルクティーを持ったままこちらにやってきて席に案内してくれる。
お店の一番奥まった場所に連れて行かれ、カップルシートのように隣り合って座れる造りになっている。
「カスミン、ゆう君きたよ」
「あ、勇太郎君」
「お待たせ
「はいこれ。ゆう君のミルクティーね」
「ありがとう」
「それじゃごゆっくり」
「うん、バイト頑張ってね」
ミルクティーを受け取ってキッチンに戻る彼女を見送り、
「お待たせ
「うん、実は
カップルシートなので自然と顔が近くなり、彼女の息遣いが聞こえる距離で話し合う。
「この間
「それはなんとも生々しいね……しかし、
「うん。知ってるみたい」
「その上での相談か。なんとも複雑だね」
「あはは。私はあんまり気にしてないけど、その相談内容っていうのはちょっと特殊で、私では抱えきれないから勇太郎君に相談したくって」
俺はこの時点で何か予感がしていた。
親友の高彦によってもたらされた一年前の特殊な経験。
そんな彼の前に現れた運命的に相性の良い女性。
そしてその彼女がもたらす特殊な相談内容。
「むしろ、私が元カノだからこそ相談してきたっていうか」
そしてその先に待っている言葉に、俺は絶句することになる。
それは……
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寝取られ性癖の彼氏に抗えない初恋の人が泣きそうな顔で困っていたので全力で助けることにした かくろう @kakurou
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