第57話 ある意味でお約束
ある日の事、俺たち三人は高彦の招待を受けて彼が住んでいる高級マンションにやってきた。
今日は高彦に新しい彼女が出来たというのでみんなで顔合わせを兼ねたお祝いパーティーをすることになった。
わだかまりを超えた今では彼氏の友人の家に変わった訳だ。
「高彦君の新しい彼女さん、どんな人なんだろうね」
「仲良くなれるといいなぁ」
ニコニコ顔でマンションのエントランスを通る
つい先ほどたっぷりと精を注ぎ込んできたばかりなのだ。
この頃俺たち全員がバイト繁忙期で中々エッチができなかったので張り切ってしまった。
どうやら俺は女の子二人をドロドロになるまで愛しまくっても翌日にはへっちゃらなくらいの絶倫になる事ができたようだ。
おかげでちょっとだけ腰がガクガクしている。
週に一度だけ三人一緒にするハーレムエッチは濃厚でパワフルなプレイの数々で毎度楽しみである。
常に三人一緒だと刺激が少なくなるから、なるべく二人の家に入り浸る事は無いようにしている。
マンネリは恋人達の大敵だ。
常に刺激あるカップル生活を送るためには適度な距離感も大切なのである。
そんな事を考えつつエントランスを通り抜けて高彦の部屋番号をプッシュして呼び出しを行なう。
『おう、待ってたぜ。今開けるわ』
コンシェルジュの人に挨拶をしてエレベーターに乗り込んでいく。
このマンション、目的の階層にしか停止しないという仕様らしくてさすが高級マンションという感じだ。
何もかもが普通のところとは全然違う。
「そういえば……このマンションでこの間不思議な子と会ったんだった」
「あ、それって道に迷ってたっていう可愛い女の子?」
「え、なにそれ知らない」
そういえば
「ああ、この間の事なんだけどさ」
俺は先日この近くで遭遇した不思議な女の子の事を伝えた。
ふわふわして現実感のないファンタジー世界のヒロインみたいな女の子の話。
スマホの使い方すら知らない箱入りお嬢様風の女の子の名は、"
いや、年齢を聞いていなかったので"ちゃん"なのか"さん"なのかは不明だ。
容姿は幼げだがおっぱいの主張は凄かったので年齢が非常に判別しづらかった。
「え、その子ってもしかして……」
話はそこで中断となって廊下を進んで部屋の方へと向かう。
「お邪魔しまーす」
「おう、よく来たな三人とも。ウチの彼女ももう来てるから早速紹介するぜ」
人の縁というモノは奇妙と言うほかない。
高彦の彼女とはどんな人物なのか。想像しながら扉を開けた瞬間、大きめのソファに座っていた人物が目に入って思わず「あ……」と声を上げる。
「あらっ、まあまあっ!」
声を上げたのはソファに座る女性。
小柄で華奢。金髪碧眼でふわふわしたフリルが似合う巨乳美少女。
「も、
「井之上様っ! なんてことでしょう。高彦さんのご親友が貴方様だったなんて♪」
なんという世間の狭さか。
そこにはつい先ほど話題に上がった人物が座っていたのだった。
「あ? なんだ勇太郎、知り合いだったのか?」
リビングへと案内されて素に入った人物。
それは先ほど話題に出ていた元野宮
フワリとした柔らかい笑顔を浮かべた彼女は両手を胸の前で合わせて声を上げる。
「え、し、
「え?」
まさかの人物との再会に驚く間もなく、俺の後ろに立っていた
「あらあらっ、まあまあっ!
「おわっ!? し、シグたんじゃんっ! 高圓寺の彼女ってシグたんなのっ!?」
「なんだよ~、お前ら全員知り合いなのか?」
高彦の疑問ももっともだと思う。
俺はつい先日、町で困っている彼女を助けてこのマンションまで連れてきたことを伝えた。
あれは本当に高彦に会いに来ていたんだな。
もともとそんな予感はあったのでちょっと驚きはあったが意外ではなかった。
「そんな事があったのかっ! なんだよ言ってくれよっ!」
「痛てえよ。背中叩くな。あん時はお前の知り合いだとは思わなかったんだ」
「それで
「その前にちゃんと紹介してくれよ」
「そうだな。まあ入れよ」
それからソファに座るように促され、
どうやら既にここに慣れているようで、まるで奥さんのように率先して動いていた。
「改めまして、
「まさかとは思いましたが、あれは高彦に会いに来てたんですね」
聞くところによると、
そして……。
「許嫁っ、おまえそんなのいたのか?」
「ああ、とは言っても、親同士が最近取り決めたことだ。俺たち自身も10年近く会ってなかったからな」
経緯としては、
そこで
高圓寺クラスにもなると許嫁も選び放題ってことか。
だが高彦はそういうのを嫌って自分で実績を積み上げる道を選んだそうだ。
本当に性癖以外はエグいくらいにハイスペックなヤツだ。
最近になって取り決めた許嫁とはどういうことかというと、もともとそういうのがイヤで一般の学校に通っていた高彦が、価値観を変えるために行動しだしたことを見た親が配慮してセッティングしてくれたそうだ。
去年の
結婚相手を親に決められるというのは我慢がならないので、自分で人柄を見て、相手にも自分の事を知ってもらいたいという思いがあったらしい。
確かに高彦の人間関係は金目的や打算なんかの思惑が常について回っており、本人もそのことにうんざりしていたからな。
しかし、安易に親の言いなりになるのもイヤだった高彦は、本当に最近までこの選択肢は外していたそうだ。
「高彦さんとは、まさしく運命の再会でしたわ。幼い頃に出会ってずっと恋していました。お見合いの話を頂いた時は天にも昇る気持ちでしたわっ」
箱入り娘なのでずっとお嬢様学校に通っていた事もあり、交友関係もかなり限定されていた。
それで、なんで
「小さい頃から通ってるバレエ教室で一緒だったんだ。私は高校までやってたんだけど、
「ええ、家の事情で専属の講師が就くことになりましたので、教室に通っていた時期が一番楽しかったですわ」
「そうだったんだ。急にやめちゃったから寂しかったんだよね」
「あの頃は"すまーとほん"も持たせてくれませんでしたので。連絡も無しにやめてしまったのはわたくしも寂しかったですわ」
「なるほど。それでこの間……」
「"すまほ"を持つのはあの日が初めてでして。本当に助かりましたわぁ」
「いえいえ、それで、あやちゃんはどういう知り合い?」
「ウチはねぇ」
アヤちゃんと
パティシエの専門学校に通っているアヤちゃん。
その実習の一環でとあるパーティーに出すお菓子を作る機会があり、その試食会に来ていたのが彼女だった。
そこで
「それにしてもスマホも持たせてもらえないって凄い箱入りお嬢様だったんだねぇ。ビックリだったよ」
「わたくしも
さすが金持ちお嬢様。ハーレムにも寛容なのか。
高彦も将来愛人を囲ったりするのだろうか。
閑話休題
さて俺たちは世間の狭さによってお互いに間接的な知り合い同士ということもあり、すぐに打ち解けることができた。
そこで、俺たちはとんでもない話題を振られることになる。
長くなるので経緯は詳しく話していくとして、先に大事なところだけ伝えておこう。
この邂逅した日から数えて数日後の出来事である。
そう、もう予想はついていると思うが……。
「頼む勇太郎っ! 俺の彼女を寝取ってくれぇっ!!」
俺の脳みそが砕け散ったのは言うまでもない。
あるいは高彦にとっては
彼の名誉のために言っておくと性癖を恋人に押しつけるデリカシーの無さを克服している高彦だが、まさかそれを望んでしまうパートナーが現れるとは思っていなかったのである。
そこに至るまでの経緯を詳しく聞くほかなかった。
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