第5話 英国館の謎

 舞台は、再び異人館村を離れ、神戸の町の外れにある「英国館」。その名の通り、英国風のクラシックな建築様式が特徴の館で、周囲を美しい庭園とともに囲まれている。この館は、かつて英国からの外交官が住んでいたことからその名がつけられ、長年放置されていたが、最近になって観光名所として開放された。しかし、この館に隠された真実は、誰もが想像し得ないほど複雑で、過去の事件が絡み合った深い謎を抱えていた。


久保田幸男(堂本剛)は、異人館村での一連の事件が一段落した後、ふとしたことで英国館に関する話を耳にする。その話とは、館の管理人であるグラント(中村倫也)が最近になって急に奇行を見せ、何かしらのトラブルに巻き込まれているというものだった。久保田は、興味本位でこの問題に関わることを決め、英国館へと足を運ぶ。


英国館の不穏な雰囲気


久保田が英国館に到着したその瞬間から、館内には不穏な空気が漂っていた。美しい庭園と豪華な内装が訪れる人々を魅了する一方で、館の管理人グラントはどこか神経質で、常に何かに追われているかのような目をしていた。久保田が館内を見学している最中、突然グラントが彼に声をかけ、何かを警告するかのように言葉を残す。


「この館には、触れてはいけない過去があります。それを知る者は、誰も幸せにはなれない。」


その言葉に久保田は疑念を抱きつつも、すぐにはその真意を掴めなかった。しかし、その後、館内で何か異常が起きている兆候を感じ始める。突然、館内で鳴り響く不協和音。久保田は急いで館内を調査し始めるが、その際、奇妙な点に気づく。館の壁に隠された一枚の絵画、そしてその絵画の裏に書かれていた不可解なメッセージ。そのメッセージには「真実は二つに分かれ、どちらを選んでも後悔する」と記されていた。


謎の遺産と死者の影


久保田は、グラントの警告を無視してさらに調査を進めることを決意する。絵画の裏に書かれていたメッセージを手掛かりに、館の過去に何か重要な出来事があったことが分かり始める。調査を進めるうちに、久保田は、館がかつて一人の裕福な英国貴族であるエドワード・スチュアート(役名:松坂桃李)によって所有されていたことを知る。エドワードはかつて、館に住みながらも奇妙な秘密の儀式に没頭していたという。その儀式は、過去に多くの謎の失踪事件を引き起こしており、周囲の人々からは「呪われた館」として恐れられていた。


久保田が調べを進めると、エドワードが遺した日記を発見する。その日記には、彼が「永遠の命」を求めて神秘的な儀式を繰り返していたことが記されていた。しかし、儀式には失敗が続き、その結果としてエドワードは命を落としたとされている。だが、その死後、館に関わる者たちは何らかの「呪い」に取り憑かれ、次々と不審な死を遂げていた。


久保田は、この呪いが今もなお続いているのではないかと感じ始める。特に、館の管理人グラントが急に奇行を見せるようになったのは、この呪いに関わっているのではないかという予感がしていた。グラントが過去に起きた失踪事件に何らかの形で関わっている可能性も浮かび上がってくる。


グラントの秘密


久保田は、グラントが館で何かを隠していることを確信する。彼の行動を追跡し、ついにグラントの隠し部屋を発見する。部屋には、エドワードの遺した資料や奇妙な儀式に関する道具が保管されていた。中でも注目すべきは、エドワードが記した「命を永遠に繋ぐための儀式」の詳細が書かれた書物だ。


その書物には、「儀式を成功させるためには、血の契約を交わし、特定の人物を生け贄に捧げなければならない」という衝撃的な内容が記されていた。そして、その生け贄として、グラントの家族の名前が記されていることが判明する。グラントは、かつてその儀式に巻き込まれ、家族を犠牲にしてしまったのだ。


しかし、グラントはその後、儀式の結果として不老不死の力を得たものの、その代償として家族を失い、館の呪いに取り憑かれてしまった。そして、彼は館を守るために、この呪いを解く方法を探し続けていたのだ。


最後の選択


久保田は、すべての真実を知ったと同時に、グラントが自らの命を賭けてこの呪いを解こうとしていることにも気づく。しかし、呪いを解くためには、グラント自身が自らの命を犠牲にし、儀式を完成させなければならないという運命が待ち受けている。


最終的に、久保田はグラントと対峙し、彼に選択を迫る。グラントは「呪いを解くためには犠牲が必要だ」と語り、久保田にその選択を任せる。久保田は迷うことなく、呪いを解くためにグラントに最後の儀式を完成させさせることを決意する。


儀式が行われる中、グラントは自らの命を呪いの力に捧げる。しかし、その瞬間、館の呪いは解け、永遠の命を手に入れる代償として彼は消え去る。館は静寂を取り戻し、呪いは永遠に消え去った。


事件の結末


その後、久保田は再び英国館を後にする。館は静まり、すべてが元通りになったかのように見えたが、久保田の心には深い余韻が残った。呪いと呪縛の中で過ぎ去った時間の重さを感じながら、彼はあの不気味な館を振り返りつつ、再び神戸の街へと戻っていった。


終わり


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妄想ミステリー⑫ 鷹山トシキ @1982

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