第6話 陸の女王の誕生!

 先代の王が亡くなり、1年が経った。


 1年は喪に伏すべきだというが、それが開けた途端、ナナ王女は大きな催しを開催した。


 場所は古い城のあった丘の下。そこにはいくつもの線路が並べられ、小さな入り江のほうに向かっていた。停留所と呼べる場所であろう。そんなところにステージが即席に作られ、来賓席や聴衆のための場所も用意されていた。

 来賓に呼ばれているのは、国の重陣。それに外国からは、商人なども呼ばれている。もちろんその中には、散々この国に資金を搾り取られている商人ポポロンの姿もあった。

 彼は心労で痩せているかと思っていたが、少々肥っている。


「皆さん、私の計画に賛同いただきましてありがとうございます! また私の無理な課題を克服して頂いたことには、大変感謝しています」


 ステージの中央、壇上に現れたナナ王女はそう切り出した。

 この1年あまりの国民の勤勉さと、前国王への敬意の表してくれたことに、丁寧に礼を言った。王族して異例な事であろう。そして、外国の商人の投資による国の発展についても付け加えた。彼らによって、これから国は魔法だけではなく、技術で進歩していくと、予言じみた事を付け加えて――


「最後になりましたが、これが私たちの1年の成果です!」


 彼女が合図をすると、巨大な音が聞こえた。雷や噴火の音でではない。金属音のような……楽器にしては音量はデカい。耳を貫くような汽笛の音だ。


 そして、ステージ前の線路にゆっくりと進み出る機関車が現れた。1年前、カッターボードの蒸気機関を据え置いたものとは違う。蒸気機関を横倒しに、L字の煙突を持った全く別の機関車だ。そしてその後ろには、一〇両ほどの石材を満載した貨車も連結されていた。


「初めてお目に掛かる方も多いと思います。これが新型の蒸気機関車『ロケット』号です」


 ナナ姫が身軽にロケット号の運転席に登ると、

「私にはこの蒸気機関車が、世界を変えるのが見えています!」


 のちに『陸の女王』と呼ばれることになるのですが……これはまだ遠い道のりの、第一歩でありました――


〈了〉

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陸の女王~魔王を倒したお姫様は、自国で産業革命を始めるようです~ 立積 赤柱 @CUBE9000

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