第46話 決闘ー悠対心優
予定通り、輝さんは優に、ロバートさんはウィリアムとぶつかった。
それぞれが戦いを制すれば、こちらの勝利になる。
いま私のするべきことは――
「え~あっちを食べたかったのにぃ。まぁ、メインディッシュの前ってことでいいか」
その小さな容姿からは想像できないくらいの風格を持つ少女。
普通なら、戦いが怖くて逃げるだろうが、”貪食者”に支配されている彼女に恐怖という感情なんてない。
ただ己の空腹を満たすためだけに動く人形。
「悪いけど、さっさと終わらせてみんなのところに加勢に行きたいの。長くは遊んであげられないわ」
「大丈夫だよ。ゆっくり食べてたら、またお腹が空いちゃうもん!」
彼女の歯の一部が牙のように鋭く変化し、爪も鋭く伸びる。
”貪食者”や”憎食者”など、人の感情や欲に干渉する
分かっているのは、他の
そして、最終的には関与する感情や欲を暴走させて発動者を壊してしまうということ。
つまり、戦いが長引けば、その分だけ危険になる。
(瞬間移動!)
この初撃で決まれば楽なんだけどなぁ……
ガッ!
「まぁ、そう上手くはいかないよね」
どうやって反応したのか、後ろからの私の攻撃を、心優は爪で止めた。
どうやら、鋭くなっている他に強度も上がっているみたい。
「お姉ちゃんは甘い匂いがするから分かりやすいね~」
匂いでバレた?
仮にそうだとしても、異常なほどの反応速度を持っているみたい。
やはりこの系統の
「食べやすいように内臓をシェイク~」
のんびりとした口調でえげつないことを言いながら、心優は蹴りを入れてくる。
言葉通り、狙っているのは腹……後ろに下がれば容易く躱せる……と思ったが
「うっ!?」
躱したにもかかわらず、お腹に衝撃が走り吹き飛ばされる。
内臓が潰れるほどではなかったが、一瞬息ができなくなったくらいには強い衝撃だった。
”天恵”を発動しておくべきだったな。
それにしても、なんで私は攻撃をもらった?
足の爪も変化してるから、蹴りを直接食らえば傷は免れないはず。
でもそれらしい傷はない。
「私ね~ きったお肉よりも潰れたお肉のほうが好きなの。ぐちゃぐちゃで歯に纏わりつく感覚がだ~い好き! だからね、潰して殺すんだ」
そういうと、心優は再び蹴りを入れてくる。
しかし私と彼女の間の距離は、蹴りを入れるにはあまりにも離れすぎている。
当たるはずない……いや、さっき躱しても食らったんだ、何かある!
(天恵!)
天恵を発動した瞬間、ガンッという音ともに何かが当たる。
間違いなく、”見えない何か”が飛んできた。
もう一発追加で蹴りを入れたのを見て、即座に相手の攻撃軌道上から離れる。
するとブゥンいう空気が切られる音……いや、まるで押しつぶされるような音が耳に届く。
ドガァァァン!!!
その直後だった。
後ろにあった崖が突然音を立てて崩れる。
振り向くと、崖はまるで”巨大な何”かが衝突したような跡を残して崩れている。
剣で切ったような跡じゃない……押しつぶしたような、そんな跡だ。
それで理解した。
先ほど彼女が言った潰れた肉のほうが好き、という言葉の意味。
おそらく、打撃攻撃とともに衝撃波を相手に飛ばし、押しつぶすんだ。
ということは爪と牙は彼女のメインの武器じゃない。
あの強力な衝撃波こそが、彼女の武器だと考えていいだろう。
あの衝撃波は銃や剣と違って近距離も遠距離も両方で使える武器だ。
つまり、槍である私はかなり相性が悪い。
ロバートさんや輝さんの弓、銃なら遠くから撃てるだろうけど。
さて、どうしたものかな……
攻撃自体は、武器の固有
それである程度は近づけるだろうが、接近すればするほど、相手の攻撃の数も多く、対処が困難になってしまう。
”瞬間移動”を使っても、相手の反応速度の前では一撃入れられるかすら危うい。
「はぁ……
この槍最大の特徴は、一撃必殺の破壊力を持つ固有
武闘大会ではうまく扱えず、未発動に終わってしまったが、今なら使える。
「
光と炎を纏った槍が、一直線に心優のほうへと向かっていった。
実力だけで生きていける世界になってしまった @zinbeityan
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。実力だけで生きていける世界になってしまったの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます