おてんば × おとぼけ = 死角なし
- ★★★ Excellent!!!
時は大正。
たった十五年という、短いながら唯一無二の空気を醸した期間。
明治に流れ込んだ西洋文化が根付き始める一方、江戸以前より続く日本文化も根強く残る。
新旧両者が混ざりあって、花開いて――――まさしくロマンがあり、モダン。
けれど……遺物と切り捨てられた物もあったようで。
たとえば拝み屋、すなわち陰陽師だとか。
ヒロインの亜寿沙も、ハイカラな考え方をする一人。
"あやかし"などデタラメ。それらをダシに商売する陰陽師は、ささいな手品を大袈裟に喧伝するペテン師、と。
でも、本当は……。
帝都の長屋に住む優男との出会いで、すべてが一度に動き出す。
頭と口は回るものの、霊力皆無の亜寿沙。
無類の術は扱えるものの、生活力皆無の維吹。
凸凹コンビが繰り広げる長編退魔ファンタジー。
本作で特筆すべきは説得力。
当時の風習はもちろん、実際の気象データまでをも織り込んだストーリーは、歴史と創作の境界がわからないほど。
かといって理屈っぽくならず、ちゃんと物語に活きている。
入魂の時代感に浸りたい人、次々と起こる事件の謎解きを楽しみたい人、ピュアなロマンスを味わいたい人、誰もが満足できるはず。
オススメいたします。