家事代行の女の子がクラスメイトだった件について

ふわふわ

プロローグ

春の桜は人々を見守るように散り始め、湿度の濃い梅雨の時期へと変化する5月の中旬。


「どしたん? 今日、ため息ばっかりだけど」


昼休み、森原慎吾は購買で購入したパンを食べながら、ため息をついていると、友人の伊勢千早が声をかけてきた。


「今日から家事代行の人が来るんだよ」

「前に話してた奴?」

「そ。親が高校生の一人暮らしで生活と勉強の両立は負担が大きいだろうからって」


千早は焼きそばパンを食べながら、へーと興味ありそうな顔で聞く。


「慎吾の両親、今、海外だっけ?」

「今年の春からね」


父が今年の春から海外に勤務となり、母は父が心配でついていく形となり、僕は海外での生活に不安を感じたので、日本に残った。


「誰がくるって聞いてないの?」

「僕と同じくらいだって」

「ってことは高校生? 家事代行って社会人がやるイメージだけど」

「僕も思ったけど、親とは話をしているみたいで、高校生みたいだよ」


話を聞いた時に歳を誤魔化されてるんじゃないかと思って聞いてみたら、契約を交わす際に学生証の提示をしてもらったみたいで、高校生であることは間違いないみたい。


「はぁ……女子と同じ環境で過ごすとか不安でしかない」

「…………羨ましい」

「変わる?」

「羨ましいけど、知らない女子と同じ部屋で過ごすのは俺も無理」


千早はどうせ一緒ならと教室の黒板の近くで友人と談笑している女の子に視線を向ける。


「大黒さん?」

「愛想はいいし、クラスの男子からの好感度、ダントツで1位!」

「千早、そういう話、好きだよね……」


大黒和美、腰まで伸ばした亜麻色の髪、整った顔立ちに加えて、異性を虜にする瞳、初対面の相手にも気軽に接してくれる様子は男性なら好きになるだろう。


「慎吾は好きな相手いないの?」

「いないよ。年齢=彼女いない歴を更新中」

「俺もだよ……冬までにできないと、今年も野郎同士で慰め合うクリスマス送るのか……」


カラオケボックスでやるやつね。昨年は受験で忙しかったから出来なかった。


「隣の部屋がカップルだから絶叫するんだよね」

「俺が国のトップになれるなら、リア充をこの世から消してもらう」


普段のリア充たちの軽蔑する目から、力を持ったら、マジでやりそうなんだよね……。権力を持たせちゃいけないタイプの人間だわ。


「クリスマスに男同士でそんなことしてるの?」


燃えるような赤色の髪をポニーテールに結っている女の子が僕たちの話に呆れるように参加する。


「うっせ。日菜には俺たちの気持ちはわからないよ」

「はいはい。そもそも、知りたくも無いし。で、途中から聞いてたんだけど、森原君の家事代行って家事だけ?」

「一応……、契約は親としたみたいだから詳しくは知らないけど」


ふーんといいながら、詳細を聞きたかったみたいで、坂本日菜さんは仲良しのグループに入っていった。


「千早は坂本さんとは幼馴染でしょ? クリスマスは一緒に過ごさないの?」

「子供の頃までは一緒に過ごしていたよ……。中学生からは俺とよりも友達と過ごす方がいいんだとよ」

「漫画みたいな関係にはならなかったんだ」

「幼馴染と恋人はリアルに求めちゃいけないな」


漫画やアニメだと幼馴染と恋人になるみたいな展開が定番だけど、リアルではそんな簡単にいかないみたいです。


「ご、ごめんね……通るね」

「あ。ごめん」


両目を髪で覆い、小柄な篠崎愛菜さんは通る際に会話を遮ったことを謝りながら、教室の外に出る。


「俺たち、何で彼女いないんだろうな……」

「聞かないで。虚しくなるから」

「共学でチャンスありそうなのに……」

「中学に同じような台詞を聞いた」


女子グループは運動部の男子には興味ありげだけど、文化系は眼中にないみたいです。

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家事代行の女の子がクラスメイトだった件について ふわふわ @huwahuwa0311

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