少年、美獣と邂逅す
第2話
「食べないのか?」
目の前の女性がそう
どこか冷たい印象を与えるほどに、目鼻立ちのキリっとした美しい顔の女性であった。
「——食欲ないんで……」
「勿体ない。せっかく頼んだのに」
「すんません……」
しかし、今の
「食べる事もトレーニングの一環だ。そうせねば肉は育たん」
そう言いながら、女性は自身の
官能的とすら思えるほどに色っぽく、それでいて大胆な喰いっぷりであった。見る人が見れば情欲すらそそられるであろう。
しかし、今の
「……よく食べれますね。あんなもの見た後に」
正直な感想を
「見たからこそ、だ。こうして喰うことで、より一層、生を実感できる。お前もいずれはそうなる」
「分かりませんね、僕には。むしろ今は、ヴィーガンにでも転向したい気分ですよ」
「無理だな、お前には。あれは修羅の道だ。私なら1日で発狂する」
でしょうね、という言葉を
「とにかく、喰え。肉が冷める。冷めると固くて不味くなる。冷めた肉ほど不味いものはない。ますます喰い辛くなるぞ」
「……分かりましたよ」
冷えて固まった肉の脂身が口に広がる様を想像したらますます
相反する感情、矛盾。それが口内というあまりに狭い空間で発生し、脳内という小宇宙で衝突した。これまでの短い人生の中で最も複雑な一口であることは間違いなかった。
「
女性が聞いてくる。
「……
「なんだその表現は、
小賢しい
「そんなの、四の五の言っていないで飲み込んじまえばいい」
そう言って女性は3枚目の肉塊に手を伸ばす。
「そう割り切れないですよ……」
そう
「小難しく考えるな。どうせ無駄だ。割り切ると楽になるぞ。私みたいにな」
いつの間にか3枚目を片付けた女性は、今度はデザートに手を伸ばしつつあった。とはいっても、一口大のアイスとかいう可愛らしいものではない。人の顔ほどの大きさの器に入った、特大のパフェであった。
「割り切る割り切らない以前の問題でしょ、それは……」
その圧倒的甘味量から目を背けつつ、
―——まるで、先ほど目撃したあの光景すらも、洗い流し飲み込もうとするかのように。
殺し合わなきゃ、愛せねぇ!! arupe @arupe
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