2.義務聖女ヴィクトリア・スチュワート
馬車が修道院の門前で止まると、門を警備する
「お待ちください、
ウィリアムは
すると、彼はすぐさま血相を変え、門を開いた。
「失礼しました、閣下。どうぞお通りください」
馬車は再び走り出し、石造りの壁の中へと吸い込まれていく。
その中央には、さながら
初代国王の王妃クリスティーナが集積した
ウィリアムは馬車から降り立ち、そのまま聖堂の入口を抜けると、
長い
だが、それも無理からぬことだろう。
本来修道院には聖職者しか立ち入らない。
つまり、ここにいる者たちは、
そんな中に、
しかし、ウィリアム自身はそうした視線を気にせず
目的地である総長室の前には、2人の衛兵らしき
ウィリアムの姿を見ると、彼らは姿勢を正し彼に一礼した。
「
「ありがとう。それで、
「はい、総長は執務室にいらっしゃいますので、ご案内いたします」
「よろしく
「ヴィクトリア様、サウスランド公がお見えです」
総長秘書が
◇◇◇◇
聖堂に
奥側の壁にも執務机が一つ。
仕事中なのであろうか、机では修道女が書類と
修道服のせいで長く美しかったはずの金髪は見えないが、それでもなお彼女の
清楚な
そんな女性だった。
「あら、ウィリアムじゃない。久しぶりね」
部屋の
そして、今回のウィリアムが修道院を訪ねた理由の人であった。
「
「ああ……」
ウィリアムはヴィクトリアに
「それで、どうしたのよ急に。
ヴィクトリアはそう言いながら、水の入ったグラスを机の上に置く。
「悪い。急だったから、
「へぇ、あなたでもそんなことあるのね」
その
「それより、顔色が悪いわ。ちょっと待ってて」
ヴィクトリアは手をウィリアムの額にかざすと、
「【
それと同時に体の
こんなに晴れやかな気分になれたのは久しぶりだ。
「ありがとう」
「どういたしまして」
「しかし、相変わらず
「まあ、これでも”聖女”だから」
ヴィクトリアは少し
修道会設立に深く関わった初代王妃クリスティーナが”聖女”と呼ばれていたため、修道会総長は代々”聖女”と呼ばれていた。
もっともこれは正式な
だが、ヴィクトリアは聖女と呼ばれることをあまり好んでいないようだった。
「それに、目つきも大分良くなったわ。何があったかは知らないけれど、少しは楽になったんじゃない?」
たしかに
「そうだな」
思えば王宮にいた
それが今はどうだろう。
とても
「それにしても
「そんなに
「ええ、もう最悪よ!」
そう言って
確かに自覚はあったのだが、そこまで言われるほどとは思っていなかった。
だが、よくよく考えればそれも当然かもしれない。
何せ四六時中あの王太子の側にいたのだから。
息苦しい王宮では、常に気を張っていたし、心休まる時間などなかった。
「そうか……、すまないな」
「いいわよ別に。それよりもどうしてここに
「実はだな……」
ウィリアムは今までの
◇◇◇◇
ウィリアムが一通り話し終えると、ヴィクトリアは難しい顔をして
「
「まあな」
ウィリアムも
まさか
「それで領地に帰る前に一度ヴィクトリアに会っておこうと思って」
「なるほどね」
彼女は少し考えた後、ウィリアムに向き直って言う。
「それで領地に帰った後はどうするつもりなのよ?」
「
「え?
ヴィクトリアは目を丸くして
「ああ、王太子に
「それはそうなのだけれど……」
そして、意を決したように顔を上げた。
「だったら
「え?」
予想外の言葉に思わず聞き返す。
「
「そのままの意味よ。南部にある
「どうせ
確かにその通りだ。
ウィリアムには特にやることもない。
せっかくの誘いを断る理由もなかった。
「だが、話がややこしくならないか?」
ウィリアムが
|聖クリスティーナ修道会も王太子とは折り合いが悪く、長きにわたって続いた王室と修道会の
今ここで
それに、もし何かあれば彼女を
ウィリアムは、それだけは何としても
だが、そんなことは意に
「
その言葉には
とにかく、
「わかった」
ウィリアムは
追放公爵と義務聖女 うにとらひこ @unitorahiko
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。追放公爵と義務聖女の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます