追放公爵と義務聖女
うにとらひこ
1.追放公爵ウィリアム・ブルース
「ウィリアム、お前を
サウスランド公ウィリアムは、王太子ジョンから
「
「お前は、俺が何をするにしても口を
「そんなつもりではありません。ただ、私は……」
「俺はもう
人間は、
それは、他人に対する
それらの
その力で悪意を持つ者を
だが、彼はどうやらそれが気に入らないようだ。
「それにだ、お前はいつも具合の悪そうな表情をしているし、目つきも悪い。そんな
「それは……、
王宮とは
自らの利益の追求のために他人を
そして、その者たちの
だが、それでも
多大な恩を
「しかし、私は……」
「うるさい! もう決めたことだ」
ウィリアムとしても、好きで
エリザベスへの恩返しのため以外の理由などなかった。
父サウスランド公ジェイムズが病死し、精神を
ウィリアムの
だからこそ、ウィリアムは
だが、そんなことも
自らの都合の良いようにしか物事を考えていない。
いや、そもそも他人のことを考える気すらないのかもしれない。
彼の関心は自分にのみに向けられているようだった。
「……わかりました」
結局ウィリアムは
◇◇◇◇
「はあ、どうしたものか……」
そんな時、
「おい、聞いたか?
「へえ、あの根暗野郎か。そりゃあいい気味だぜ。今までさんざん
「ざまあねえな」
見ると
「まあでもよ、正直せいせいしたぜ。あいつのおかげでどれだけ仕事がやり
「そうだな。
当初仕えていた
国王が病に
王太子が
それを
ウィリアムなりに良かれと思って進言していたつもりだったが、どうやら周りの目には逆効果だったようだ。
現在仕えている
それどころか、逆に王太子に取り入ることで出世を
そんな中で、ウィリアム一人が
ウィリアムが考えていた以上に現実は非情で、
税を課し
それがこの国
ウィリアムは無力感に打ちひしがれながら、車寄せへと向かった。
◇◇◇◇
外に出ると秋風が強く
「
「……ああ、とりあえず王都を出たい」
「へい」
ウィリアムは力なく答える。
どうせ領地に帰るというのなら、
四六時中王宮に
王都にも
血統上の母であるマーガレットはまだ生きていたが、修道院送りになって以来面会もしていない。
この国では、その色が
もっとも、王や
そんな中、ウィリアムの髪かみは王女であった祖母に似た明るい金色の髪をしていた。
母であったマーガレットのコンプレックスは
それでも、
だが、成長して母の心の
◇◇◇◇
いつしか馬車は王都の
季節は秋の終わり。
冬の
ふと空を見上げると、空はどんよりとした
ウィリアムはそんな天候を見て、ある日の
あれはまだ
その日、ウィリアムは王都の
母マーガレットの
やがて雨が
すでに日が
このまま自分は死んでしまうのだろうか。
そんなことを考えながら歩き続けていると、雨音に
声の方に顔を向けると、
少女はどこか
「久しぶり。どうして
その問いに答えられずにいると、少女の方から言葉を続けた。
「お
「え?」
「ほら」
そう言って手を差し出し、行き場のないウィリアムを助けたのは彼と同じ
過ぎ去った日の
そこには
その
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