第2話 転職したい、
四天王のとはそれぞれ属性がある。
基本的に人間を魔物に堕とすために編成されているためである。
よくあるのは、強さを認められた勇者が闇落ちするケースや女勇者が淫魔の手で堕落するというケース。
堕ちたもののその後など目を向けられたものではない。
また、城に来る前にやられた勇者やそのパーティーメンバーを希に回収するのも、ファティーグの役目だ。
吐き戻すほどの残酷死体など、見慣れている。
一時期ゴブリンが全滅したダンジョンの掃除に来た際、あまりの惨状に心が壊れたファティーグを看病した同じ四天王のインキュバス、プライスにファティーグは恩を感じている。
退職届けを出そうと魔王の部屋に向かっていたファティーグだが、疲労のせいか、目の前が暗くなる真っ暗になり、倒れてしまった。
しばらくし、意識は戻っても誰一人としてファティーグを助けようともしなかった。
退職届けがないことに気づき必死に探すファティーグの背後からプライスが現れた。
プライスの手にはファティーグの退職届けが。
ファティーグ「ぷ、プライス …?それ、私の…」
回らない頭で懸命に言葉を発するファティーグ。
プライスはただ、微笑みを浮かべるだけだ。
退職届けを取り返し、魔王のもとにゆくファティーグ。
魔王「何ぃッッ!?四天王をやめたいだと?お前が今欠けたら勇者共に隙を与えてしまうだろう?もう少し時期を考えてくれよ、」
魔王は退職届けをファティーグの前でビリビリにしてみせた。
魔王「まあ、もう少しだけ頑張ってくれよ、」
魔王に肩を押されたが、ファティーグはとうに限界を迎えていた。
自室に戻ったファティーグに待っているのは、押し付けられた大量の仕事と、ひどいクマのできた自分の顔を嫌でも目に入る姿見であった。
仕事を前にし、何かが壊れたように涙が溢れた。
「もう、自分がわからない。逃げ場なんてない、自由に町々や綺麗な自然の森を眺めたい…、」
溢れた涙は、今まで飲みしまいこんでいた、彼女の心の叫びだった。
書き直した退職届けを机に叩きつけ、皆が寝静まる丑三つに彼女は逃げた。
日が昇る頃には人間の街へついた。魔王軍の追手を逃れるため、人間に化け、臭いや気配を消した。
日が昇りきり、人間の動きが活発になった。
ファティーグにとって人間の街は初めてではなかった。偵察で何度も通った道、馬車の乗り場に見覚えのある店の亭主。
溶け込んでしまえば人間にしか見えない、そんな世界なのだ。
ふと目に止まったギルド協会の建物に入って見るファティーグ。
そこには勇者や聖職者などが大勢クエストを眺めていた、そこに書かれていたこととは…
ファティーグ自身のことであった。
モブ「見ろよこのクエスト、すげえ報酬金だ ぜ?」
モブ2「四天王の一人が逃げ出した?首を取れば…一生遊んでもお釣りが来るじゃねえか!」
クエストの依頼書にはご丁寧にファティーグの写真まで添えられ、手配書とそう、変わらなかった。
皆が依頼に走る中、ファティーグは一人怯えていた。
ファティーグ「冗談じゃない、冗談じゃない…せっかく地獄のブラック魔王城から逃げてきたってのに、今度は賞金首の扱いじゃ無いか、私が何をしたっていうんだよぅ、」
ファティーグが怯えていると、1人の女剣士が話しかけてきた。
最弱四天王、疲労により転職します。 稲荷 和風 @TYESIYAKTUNE1425
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