最弱四天王、疲労により転職します。

稲荷 和風

第1話 疲労が限界なんじゃ、

ファンタジー作品のキャラクターとは、敵味方関係なく魅力的なキャラクターが多い。

だが、四天王という4人の強き魔物なら、必ずしもこの言葉を聞くだろう。


「奴は所詮我らの中でも最弱…」と、


だが、これだけは頭に入れておいてほしい。

四天王や裏切り者ポジションのキャラクターなどはブラック企業並の激務だということを。


この物語の主人公、ファティーグもまた、四天王の一人であり、最弱ポジションであった。


ファティーグ「嗚呼嗚呼…、魔王の部下やめたい…」


魔王城の食堂で愚痴をこぼすファティーグ、同僚のダークエルフに慰められていた。


ダークエルフ「大丈夫?働きすぎなのよ、少し休んだら?」


ファティーグ「休めたら休んどるわッッ!!」


ファティーグの大声が食堂内に響く。


ダークエルフ「まあ、言いたいことはわかるわ、」


ダークエルフも深いため息をつき、愚痴をこぼした。


ダークエルフ「私もねぇ、色々ストレスなのよ、勇者達を誘惑して魔物に堕して、教育、教育教育教育教育教育…」


壊れたように教育を連呼するダークエルフを心配しながらも、自身の限界を嘆くファティーグ。


ファティーグ「城の見張りとかならまだいいけど、こちとら四天王よ四天王…、誰かは最弱って下りされなきゃいけないし…私に仕事押し付けられるし、」


ダークエルフ「まあ、気持ちは分からんでもないわぁ…、こちとら復活魔法かダークプリーストの知り合いでもいない限り、倒されたら何百年も漂わないと復活できないし、たまにナンパしてくるうざい奴らはいるし、」


机に突っ伏し、うんうんと頷くファティーグ


ファティーグ「しかも勇者と言っても、うざいのばっかし……、まるでアタシら光輝く悪を断ち切る選ばれし主人公って感じで主人公ムーブかまして何回も挑んでくるやつが一番…、」


ファティーグは口を開けば愚痴が飛び出てくる。

ダークエルフは興味がないようにパスタを眺めている。


机の上に乱雑に置かれたエナドリを一気飲みし、ファティーグは高らかと宣言した。


「いつか…いつか必ず転職してやる、転職して私が主人公ムーブかまして煽りまくってやるんだあああああ!!!」


そう、ファティーグの望みとは、勇者になることでも、魔王を倒すことでもない。


彼女は、まともな仕事へと転職をすることが何よりの望みである。


疲労やストレスの限界にエナドリとともに耐えながら今日も彼女は退職届けを出そうと魔王様の元へゆく。


彼女の仕事は四天王の最弱ポジション。

勇者が来るたび戦い、倒れてしまえば仲間に弱い弱いと言われるしまつ。


勇者が来るまでの間、魔物達とコンタクトを取り、何百何千人といる勇者達のレベルや場所などを随時把握し、コンタクトを取れる魔物には協力を仰ぐ、魔王の命令を配下の魔物へストームカラスを使い伝えたり、仕事が山積みである。

本来4人分の仕事を最弱というレッテルだけで一人でこなしているのだ。


ただもう一人の四天王を除いて。

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