第2話 身に宿りし悪魔の呪い
右腕と同じように痛む左腕を抱えながら、私はとにかく孤立している人を探した。
この前のように、私の力は人を殺して、喰らって、制御出来るように...いや、進化していくのかもしれない。その仮説を信じてただ突っ切った。
1人の狩人がいた。緑のスカーフをした大柄の男だった。私はその人間を殺して、左腕の力に吸収させた。
仮説は正しかったようで、やはり制御出来るよう。両腕同時に力を使うことも出来るし、もはやこれは私に与えられた力なのかもしれないと錯覚してしまうくらいには自由に使える。
私は城の王から、「他の国に現れるとされる、上位の魔物を倒してこい」と命令された。
そんなこんなで、私は別の国に移動した。本当にRPGみたいだ。
国は城とは違い、全員が裕福そうで、健康そうで、愉快な人々だった。城は貧困層が多かったから、そう見えたのかもしれない。
その国の国立図書館で、私の力の記述がないかと探してみた。カビ臭いひとつの本に、ついでかのように書かれていた。
「上位悪魔、ヴェルセデス。その悪魔が呪いとして保有する力にご注意を!闇の力に身体が侵されてしまいます!」明るい口調で説明される呪いの詳細に、私は驚かされた。「この呪いは生物を殺し力を蓄え、宿主に人を殺させることで満足し、進化する。」つまりは、生物をがむしゃらに殺して、人を殺して進化する呪い。
なんという呪いを勇者に付与してくれたのか、あの悪魔は。つまりこれで私の力は呪いであることがわかった。鑑定所には絶対行けないな。
王から依頼されていた魔物の討伐についての説明を受けている時に、空からとてつもない轟音が鳴った。
空が割れ、その中から3つの頭が飛来してきた。
胴体はなく、頭のみの魔物なんて聞いたことがない。本にも書いていなかったはずだ。伝承だけにしてはやっていることが大袈裟すぎる...
そんなことはどうでもよくて、私は名目上勇者なのである。もちろん倒しに行った。その間にも3つの頭は人を殺していく。
赤い色をした頭は「ヴェヌ」青い色をした頭は「サヌ」緑色をした頭は「ハヌ」と腹立たしく名乗った。
1つ1つが魔法を使えて、ヴェヌは炎を、サヌは水を、ハヌは草の魔法を使ってくる。そのどれもが最上位だ。
その最上位の魔法を喰らい続ける度に、呪いの痛みが酷くなっていく。痛みが蓄積される事に、呪いは制御出来なくなる。
おちおちしていると私が殺されてしまう。ハヌの草は所詮ただの草なので、ヴェヌの攻撃を誘発して燃やさせて、その瞬間に私が倒した。
...ああ、血が一気に疼く。頭全体に痛みが走る...
都合がよく、頭たちが殺して行った死体を1つ吸収した。だが、痛みは治まらなかった。
その隙に私は残りの2つの頭に攻撃を受け、目の前が黒くなった。
死んだかと思ったのだが、次に目を開けた時は頭全てが破壊されていた。私の頭の痛みもなく、至って平常。その代わりに、私の鎧は返り血で濡れていた。
私の頭はついに異形の力に侵されてしまったのかもしれない。顔が変形出来るようになった。
鏡で見ると、もう私は典型的な怪物、化け物、この世界で言うなら悪魔である。この力をどうにかして隠さなければならない。
理性が私を喰っている 漣 @sazana_mi
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