第10話 私と夜光リトル

【夕陽リトル】

1:遊:城野ケンジ⑤

2:二:草場ホノカ⑤

3:三:大葉レン⑥

4:捕:月山リュウ⑤

5:一:大空ひまわり⑤

6:中:町田カズマ⑥

7:投:古井マサヒロ⑥

8:左:綿谷ハルヒコ⑥

9:右:山田キョウヤ⑤

ーーーーーーーーーー


「プレイボール!」


 主審の掛け声と共に夕陽リトルの先攻で試合が始まる。打席には1番の城野が入った。


「この人が遠坂か。確か決め球はカーブだったな。追い込まれる前はストレート狙いだ。」


 遠坂が第1球を投げる。ボールはカーブの軌道を描きストライクゾーンへと収まる。


「ちっ、初球から変化球かよ。」


 遠坂は表情もなく、淡々とボールを投げ込んでくる。2球目、3球目もカーブで投げ続け城野はセカンドゴロに打ち取られた。


「くそっ、逃げやがって、あのヤロー。」


「あんなに変化球ばっかりで何にビビってんのかしらね。」


 遠坂はその後のホノカ、大葉と続く打者に対しても変化球のみで内野ゴロに打って取り、夕陽の表の攻撃は終了した。


 マウンドからベンチへと下がる遠坂に対して、夜光の監督である鬼塚が声を掛ける。


「ふっ、まあまあの出来やな。油断するなよ遠坂。本番の夏の為に朝風避けて投げさせてんだからな、この前みたいなピッチングしたら、また走らせるぞ。」


「……はい。」


「お前らもしっかり守って、点取らねぇと1日中走らせるからな!!」


「「は、はい!」」


 監督の発言に選手達が萎縮しながら応える。チームの雰囲気はお世辞にも良いとは言えない。


「お願いします!」


 夜光の1番バッターが打席に立つ。マウンドには6年生の古井が上がっている。左投げの投手であり、夕陽リトルの2番手投手である。


 古井はコントロールが良く、ストレートとカーブの球速差で相手を打ち取るのが基本スタイルだ。


カツン。

「ショート!!」


 当たり損ないのショートゴロにいち早く反応し、城野がショートバウンドで捕球する。送球までも澱みなくファーストにボールを送りアウトにとった。


「古井さんのストレートがいい感じだな。カーブはボール球でストレートでゴロを打たせよう。」


 月山のリードに応えて古井もその後の打者をセカンドゴロとセンターフライで打ち取る。セカンドのホノカとセンター町田は難なく打球を捌き初回を無失点で終えた。


「ナイピッチだ。古井くん。」

「ナイピッチ!」「いいボールきてるよー。」

 

 大空監督は古井を拍手で向かえる。


「よしっ、古井の調子も良さそうだ。何よりウチのチームは守備が良い。ひまわりがノーコンだったおかげで取れるアウトは確実にと守備練習を多くしてきた成果が出てきているぞ。あとは、バッティングの方だがそれは、、、。」


カキーーン!


 球場に快音が鳴り響く。火の出るようなライナーがセンター前へと抜ける。


「ちょっとボール球だったな、、。」


 月山は飄々とアームカバーを外していた。相手チームはあまりの打球スピードに冷や汗をかいている。


「すごい打球だったな。」「あんなの夕陽にいたか?」「身体も大きいが何年生だ?」


 球場で試合を見ている観客達もザワつき始める。その中には朝風リトルの面々もいた。


「あれが連勝の要因か。ウチのチームにもあんな打球を打つ選手はいないぞ。どこから連れて来たんだ、大空さんは。」


 朝風リトルの田尾監督の目は月山を見定めるかのように見つめている。


「ふんっ、良い選手がいれば余裕で勝てるのがリトルってやつだ。良かったな、夕陽の監督さんよ。まあ、今年のウチは遠坂以外はパッとせんハズレだが、ある程度は勝たないと選手が集まらないんでね。今日は勝たせてもらいますよ。」


 鬼塚監督は夜光バッテリーにサインを送る。そのサインを見て遠坂は頷いた。バッターボックスには大空ひまわりが自信満々に向かう。


「ここは、私のホームランで先制するよー。」


クイッ

クイッ

クイッ

カツン→セカンドゴロ→ゲッツー


「また全部カーブじゃんかー!!!」

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