第9話 私と公式試合

 5月中旬、夕陽リトルは新チーム初の公式試合であるユニオンカップに参加していた。


 関東圏のチームが参加する大会であり、東京•神奈川•北関東•東関東でブラック分けがされ、各ブロック3チームずつ総当たりを行い1位になった4チームでトーナメントを行う大会形式である。


 夕陽リトルは東京ブロックに参加しており予選は朝風リトル、夜光リトルという同地区のチームと戦う予定だ。


 球場外にてチームでの準備体操を終え、監督が夕陽リトルの選手達を集めている。


「よしっ、皆集まったな。我々は第1試合で夜光リトルと第3試合で朝風リトルと戦う事になる。明日のトーナメンに進むには1試合も負けられないぞ。先週伝えた通り夜光戦では先発は古井くん、朝風戦はひまわりが先発でいく。それぞれしっかり準備をしていてくれよ。」


「「「はいっ!」」」


「じゃあ、グラウンドでのノックは30分後だ。10分前にはベンチに入るからそれぞれ用意して集合するように。」


 監督の言葉に選手達はそれぞれ用意を始める。練習試合の連勝は未だに続いておりチーム全体が自身に溢れていた。


「大空さん、お久しぶりです。」


「ああ、おはようございます。田尾さん。」


 監督に声をかけて来たのは朝風リトルの監督である田尾であった。娘の入団を断られて以来2人には微妙な空気が流れている。


「大空さんのチーム絶好調みたいじゃないですか。我々も負けていられませんね。」


「いえいえ、田尾さんのチームには敵いませんよ。噂ではプロ野球選手の身内の方が入団されているみたいで、はははは。」


「何してんだか。」


 自分の父親と敵監督がお互いを褒め合う上辺だけの会話を続けているのを横目で見ながら、大空はフォームの確認を行っていた。


「ひまわり、試合前にお手洗い行かない?」


「いいよ、ホノカ。」


 大空はホノカと球場外のトイレに向かう。その向かい側から1人、ユニフォームを着た長い髪の女の子が歩いてきた。見るものの目線を独り占めにしてしまうような美しい顔立ちと長い黒髪が印象的な少女に2人は目を奪われた。


「すっごい綺麗な子だったね。あのユニフォームは朝風かな? あんな子いたかな?」


「う、うん。」


 すれ違ったその少女に大空は目で追い続けた。その姿はどこか自分の憧れたあのプロ野球選手の姿を思い出させるものだった。




 試合開始時刻も近づきグラウンドでは夜光リトルのノックが始まっている。活気があるというよりも黙々とそれぞれが役割を果たしているようなチームだ。


「月山、お前はあのチームが合ってるんじゃないのか? 俺嫌なんだよなあ、あそこの監督すぐ怒鳴るし陰気くさくてさ。」


 城野は夜光リトルをみてイヤイヤと首を振る。ちなみに月山はその言葉を完全に無視して夜光のデータを確認している。


「集合!」


 大葉キャプテンの掛け声でナインは円陣を組む。皆んなの目線には夜光側のブルペンでピッチングをしている背番号1番が映った。


「夜光のエース遠坂が先発か。朝風に持ってくると思ったんだがな。この辺りでのうちらの世代じゃNo. 1だからな。チームは調子がいいんだ、必ず打ち崩すぞ。」


「「おう!!」」


「絶対勝つぞ! 夕陽ーーー、ゴーーーー!!」


「「「ゴーーー!!!」」」


 今から新チーム初の公式戦が始まろうとしている。


1:遊:城野ケンジ⑤

2:二:草場ホノカ⑤

3:三:大葉レン⑥

4:捕:月山リュウ⑤

5:一:大空ひまわり⑤

6:中:町田カズマ⑥

7:投:古井マサヒロ⑥

8:左:綿谷ハルヒコ⑥

9:右:山田キョウヤ⑤

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