第25話 新たな始まり

カフェ「パッタイ・タイムズ」は、戦いから戻った雅史、玲奈、大介を迎えるように、暖かな日差しに包まれていた。長い戦いを終えた三人は、それぞれがほっとした表情を浮かべながら、店内に足を踏み入れた。


「やっぱり、ここが一番落ち着くな。」

雅史はカウンターに土鍋を置き、静かに呟いた。玲奈もその横に腰掛け、安堵のため息をついた。

「ようやく、普通の日常に戻れるのね。」


大介は窓際に座り、紅茶を飲みながらにやりと笑った。

「でも、また何か起きる気がするけどな。お前たちと一緒だと、落ち着いた時間が長続きする気がしない。」


その日、カフェには常連客が久しぶりに訪れていた。彼らは、カフェが突然閉店した理由を尋ね、雅史が適当に「少し旅行に行っていた」とごまかしていた。


「まあ、何があったにせよ、またこのカフェでゆっくりできるのは嬉しいわ。」

常連客の一人がそう言いながら、特製パッタイを頼む。雅史は満足そうに土鍋を取り出し、パッタイを調理し始めた。


玲奈がその様子を見ながら微笑む。

「いつもの雅史さんに戻ったわね。」


雅史は肩越しに振り返り、冗談めかして言った。

「戦うより、パッタイを作ってる方が俺の本職だからな。」


その夜、三人はカフェを閉めた後、静かに紅茶を飲みながら語り合っていた。

玲奈がテーブルに肘をつきながら口を開く。

「でも、本当にこれで終わりなのかな。ノーパンティは壊滅したけど、グリーヴァス卿が言っていた“思想”はまだ残っているかもしれない。」


雅史は少し考え込み、紅茶を一口飲んだ後、静かに答えた。

「思想や信念ってのは、簡単に消えるものじゃない。それでも、俺たちが守った自由は、きっと誰かの力になるはずだ。」


大介が笑いながら肩をすくめた。

「お前がそう言うなら信じるさ。俺はただ、また何か面白いことが起きるのを待つだけだ。」


その頃、遠く離れた地で、薄暗い部屋の中に一人の人物が座っていた。その手には、新たな計画の設計図が握られている。

「奴らがパンティを守ったとしても、この世界は変えられる。ノーパンティの思想を受け継ぐ者はまだここにいる。」


不気味な笑みを浮かべるその人物の後ろには、巨大なモニターがあり、新たな施設の建設計画が映し出されていた。


カフェ「パッタイ・タイムズ」の明かりが夜空にぽつりと灯る。その光は、戦いを終えた平穏を象徴するかのようだった。

雅史は土鍋を磨きながら、静かに呟く。

「また何かが起きたら、その時も俺の土鍋とパッタイで乗り越えよう。」


玲奈と大介もその言葉に微笑みで答え、それぞれが新たな日常を迎える準備をしていた。


戦いの一章は終わり、そして、新たな物語が始まろうとしていた――。


(第25話 完結)

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パッタイと、パンティと、伊達メガネのおっさん。 星咲 紗和(ほしざき さわ) @bosanezaki92

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