第3話 マジで行きたくないんだが...
「私を貴方のギルドに入れてください!!」
「は??」
金色に輝く髪に、ラピスラズリの様な紫色を帯びた深い青色の目、絶世の美貌と豊満な身体付きをした少女...いや皇女が言う。
何故こんなことになってしまったのか...時は1週間前に遡る。
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「マスタァー。この依頼なんだけど〜。」
そう言って、俺が適当にサインしてギルド総括会...いわゆるギルドを束ねる組合的な所に送った依頼書を左手でゆらゆら揺らしながら、ギルド頭主室にノックもせずに、顰めっ面で入ってきた少女。
「あのね?ライナ?ノックしないとダメだから、てか、無断で入っちゃダメだから、この部屋。」
「えー、別に良くない?私とマスターの仲なんだし。」
「良くありません。」
この、紫色の髪にまるで誰も彼をも虜にする様な輝く金色の眼を持ち、ギルド内でも上位の顔立ちをしていると...思う(自分的に)少女、ライナ・アルスティン。
彼女は、俺とデリルがギルドを結成して1人目にできたギルドメンバーだ。
今では、このアスリナ帝国でも、頭角を表し冒険者ギルドの中でも様々な功績を挙げ、『赤穂の蛍』だが、最初の頃はこのライナとデリルとの戦闘的な相性の悪さから、1つランクを上げるまでに半年もかかってしまうという失速をしてしまった。
まぁ、この相性の悪さは時間が解決していき、仲間を増やして俺たちは強くなっていった...。
いや、俺たちではなく、俺以外は...だが。
ていうか、俺の能力的にD...いやEランク冒険者にもマトモにタイマンで戦ったら勝てる気がしない。
「まっ、そんな事は置いといてぇ...。」
「いや、置いたらダメだから。」
「はーい。それでー、なーんで私がギルスカに行かなきゃいけないの??」
「...??ギルスカ?」
「そー。なんか絶対行かなきゃいけない?的なの書いてるけどー。」
「...。」
ヤバい。
見た記憶がない。
てか、依頼書なんてヤバそうなの以外は、適当に流し読みしてサインしてるんだから、正直何が何か分からないのだ。
それに、書類にライナの名前を書いた記憶すらないんだが...。
「あぁー!それね。それは、あれだ。今回のギルスカに、面白い子が来るんだよ。」
「えぇ?ほんとー??」
「ほんと、ほんと!」
まぁ、知らんが...。
ギルスカ...それは正式名称をギルド総合スカウト合議というもので、様々なギルドが、総括会の設けた場所で新人やギルドに属していない冒険者をスカウトする場だ。
1年に1度しかないイベント?のため帝国に属するギルドは必ず参加が義務付けられている。
去年は頭主のデリルと、頭主代理の俺が行ったが、俺たちのギルドが、まぁそこそこ名前の売れたギルドだった為、チャレンジ精神の強い中堅冒険者やら活きの良い新人冒険者やらに喧嘩を売られ、それをデリルが買ってしまいメチャクチャにしてしまった。
その負目からも今回は...ん??今このギルドの頭主って俺だよね?って事は...。
「それってさ、俺の名前も書いてない?」
「えー?んー、と...えっ?書いてるじゃーん。やった!デートだね?マスタァー。」
「...えっ。」
「...?」
やっぱり書いてますよね...。
うん、とてつもなく行きたくない。
ここは、代わりにデリルに行ってもらった方が良いな。
うん...。
「あー、ごめんごめん。その日予定あるんだよねー、俺。」
「えー?そうなのー?!折角デートだってテンション上がってたとこなのにー。」
「ハハッ。ごめんごめん。」
「でも、この日、お姫様が来るって書いてたけど...行かないんだぁー。」
「ん??お姫様って?」
「第2皇太子妃が来るってよ?」
第2皇女?!
ま、まずいッ!!
この前のギルスカで、デリルがやらかした際に助け舟を出してくれたのが、第2皇女、セシリア・バーンヒルデ。
何故か、来年のギルスカに来ることを条件に許してくれた。
うーん。
今頃思い出してしまった...。
ギルスカが終わった後に思い出したのなら、罪悪感も何もなかったというのに。
まぁ、忘れたまんまにしておいても良いが...後から何かと面倒事になりそうだ。
「あー、やっぱり予定空いてたから、俺も行こっかなぁ。」
「えぇ?!何それー、皇女様がいるからぁー?」
「違う違う、ライナと行きたかったんだよ。」
「えっ?!本当ー?!もー、マスターったら!」
まぁ、ライナがいれば、色々と安心できるし大丈夫でしょ。
うん...。
殺されたりはしないはず...でも冒険者って気性が荒いのが多いからなぁ。
はぁ...お腹痛い。
最弱冒険者なんですが、何故か最強冒険者の一角的な扱い受けているんですが...。 蜂乃巣 @Hatinosu3268
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