第2話 出会いと【災難】の始まり。
デリルと出会って、数週間で俺達は徐々にダンジョンの難易度を上げ、適正レベルEランクのダンジョンに挑める程の力をつけた。(冒険者のレベルは下からH.G.F.E.D.C.B.A.S)
元々、1週間そこらで、Eランクダンジョンに潜れた、という冒険者はそこまで少なくはない。
だが、それは前衛と後衛、そして中衛とサーバーと呼ばれるサブ攻撃(弓・魔法)を主にする者、そして荷物持ち的な雑用係をいれた5人で結成されたパーティならばそこそこ早い、というレベルなのだが、俺達は2人でそれを成し遂げた。
まぁ、2人といっても俺は荷物持ち程度で、戦っていたのはデリルであり、普通に考えて1人でこのEランクまで上がるとなると人並外れた戦闘力が要求され、それを成し遂げたデリルは冒険者の中でも天才と呼ばれる方の人種なのだろう。
「おーい!リーク。俺達、ギルド作らないか?!」
酒瓶を右手に持って、1人孤独に隅の席に座っている俺の前に、ギルド結成申込書、と書かれた紙を、空いた手でドンっとテーブルの上に起き、清々しい笑顔でデリルが言う。
「はっ?!いきなり何言ってんだよ。」
「いやいや、俺達2人、ギルド結成の為の最低限の条件はクリアしてんじゃねーか。」
「...。」
確かにデリルの言う通り、ギルド結成の為の最低条件は、2人以上の冒険者とその冒険者ランクがE以上の者が居る事。
またダンジョンに3回以上潜り、ボスを討伐したことのある者。
の2つだ。
まぁ、普通のパーティならギルドを作ってしまっても良いのかも知れない。
ギルド結成により得られる権利や利益だってあるし、メリットの方がデメリットよりも遥かに大きい。
だが、ギルドを作る事によって、俺には一つだけ懸念点がある。
それは、ギルド結成時の冒険者達の中で2人、頭主と頭主代理を作らなければならないという事だ。
俺は正直にいうと...というか、誰がどうみても雑魚だ。
ダンジョン内ではデリルが戦っているのを他所目に、自分にダンジョン内で出てくる魔物の注意が向かない様に立ち回っている始末。
そんな男に、このデリルという男は当主代理をしろ、とでも言うのだろうか?
「いや、俺は...正直お荷物だし、他のメンバーを募集してから作れば良いんじゃないか?」
「いや、俺はギルドを作るとならお前が良い!」
「...。」
デリルと出会って、もう2ヶ月かそこらは一緒に過ごしてきたが、今までの俺の働きをみてそう思ってくれているのなら、なんだか嬉しい。
今まで、役立たずだと定義してきた自分の中の捻くれた感情がこの時ばかりは、デリルの言葉に救われた気がした。
「そ、そうか?なら作るか...まぁ、俺は頭主代理だし、別にする事なんてないだろ?」
「??」
おい、なんだその反応は。
デリルは首を傾げて、俺の方をジッとみる。
「何だよ?」
「お前が、頭主だよ?」
「は?」
「俺がお前が頭主なら、お前が頭主になるべきだ!うん!」
コイツ、やっぱバカだわ。
雑魚が頭主のギルドなんてバカにされる所か、すぐに他ギルドから潰されてしまうに決まってる...。
「はぁ??いやいや、お前が頭主じゃなけりゃ、俺はギルドを作るのに反対だ。」
「....いや、絶対に...。」
「反対だ!!」
「...。はぁ...分かった、分かった。じゃあ、あれだ。俺がその時だと思った時、頭主の座をお前に譲る。それで良いか?」
「....んー、まぁ、それなら、な?」
良くはない。良くはないが、今を凌げれば何だって良い。
それが俺の座右の銘なのだ。
「よし、じゃあ、ちゃんと覚えとけよ?リーク。」
「あぁ、はいはい。」
-------------
ヤバい。
今思い返したら、完全にその約束とやらをしちゃってますね。
「ヤバい、ヤバい!!」
そう言いながら、壁に頭をゴンゴンと軽くぶつける。
何でこうなった?!
あの時、その場凌ぎで言った言葉が4年経った今で、どうして活きてくるんだよ!!
クソッ!!
明日は体調の悪いフリして、1日部屋に篭ろう。
「うん。それが良い。」
俺は壁に頭を叩きつけるのをやめて、ベットへとダイブし、布団に潜る。
何も考えなければ、怖くないのだ。
そう怖くなんかないし、明日なんて来ない。
「そうだ、うん。」
ヤバい、メチャクチャ腹が痛い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます