第11話『白くて揺らいでくねくねで①』
どれだけ走ったのか、振り返ると既に都市伝説の姿は見えなくなっていた。
「はぁ、はぁ・・・アレは一体・・・」
本能的に逃げ出してしまったが、アレがなんだったのかパニック状態の遥にはわからなかった。
身を屈め肩で息する遥の胸ポケットから以前受け取った名刺が見える。
(そうだ、落ち着け僕・・・連絡、してみるか)
遥はキールに連絡し、再び待ち合わせする事にした。
幸いすぐに会う事が出来、ファミレスのテーブルで向かい合っていた。
「なるほど・・・冷静になった今の遥さんならわかってると思うっスけど、そいつは恐らく『くねくね』っス」
「そうか、だから白くて揺らめいた」
「ですね、くねくねはゆらゆらと動き正体を知られた相手を狂わせる。夕方の逆光でと滅鬼になった事で抵抗が出来たんでしょうね、頭痛程度で済んだって事っス」
『くねくね』は田んぼや川の様な場所に現れる白い
揺らめく様に踊っているその姿を遠目から見るだけなら問題ないが、その正体を知ってしまうと人を狂わせ日を追う事に知能障害を引き起こしていく。
「まさか別々の都市伝説があの場所に集まっているとは思わなかったっス。しかも、どちらも精神干渉するタイプ・・・早く仕留めないとマズいっスね」
「僕がやります。元々頼まれていた事ですし、アレが何かわかった今、滅鬼になれば戦えますし」
「・・・わかりました、必要な物とかあれば私が用意するっス」
遥はキールと分かれてからすぐに例の住宅街へ向かった。
(被害が広がる前にどちらかだけでも必ず・・・)
住宅街はすっかり静まり返っていた。
街灯の一定の灯がチカチカと点灯しているのが不気味である。
くねくねが現れた場所に辿り着いた遥は辺りを見渡すが、簡単に見つかるわけもない。
当てもなく歩き始めた時、それは現れた。
「くねくね・・・」
前回と違い、ハッキリとわかる。
真っ白に揺らめく姿は煙や紙の様に関節を無視した動きをしている。
まだ距離はある為、頭痛は強くない。
だが、くねくねはゆっくりと近づいている。
頭痛が強くなる中、遥は集中する
(あの時の感覚・・・)
身体が熱くなる。
燃える様に熱くなる。
額から角が生え、身体を衣が包み込む。
-鬼の衣・赤-
一気にくねくねに肉薄し殴りかかる。
拳は当たるが柳に風、感触はあるが柔らかい身体が衝撃を逃がしダメージがない。
(まるで抵抗が無い、だったら・・・)
「はぁぁっ!」
とある武術に
障害物を通り越し相手にダメージを伝える技と言われている。
衝突球をイメージするとわかりやすいだろう。
複数の球を横並びで吊り、端の球が当たった球を衝撃が通り過ぎ反対の端の球を弾き飛ばす。
遥はそれをくねくねに放つ。
原理を知っている訳ではない。
だが、滅鬼は全ての都市伝説を滅ぼす鬼、そして都市伝説はその伝承に基づき現象を引き寄せる。
都市伝説は君の隣に 紅陽 流美菜 @kouyou_rumina
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。都市伝説は君の隣にの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます