心の中の迷路

かもめ7440

第1話


瞳を閉じながら、

(I Want You to Stay...)

交差点の雑踏が犇めき合い、

信号と共に動き出す―――時の、

眩暈のような、壊れそうな、心・・。

(“TILL I’M IN THE GRAVE”...)


永遠に続くような悲しみへの戸惑いは、

問いの入り口からあっ―――たよ、

迷宮に滑り込んでいるような病の本質・・。

「これが人生か―――」

「皮肉な人生・・・・・・だ」


―――誰のせいでもないんだよ、

だから、君がそれに対して何を想うこともない、

夜と昼、男と女、心と肉体・・。


それでも主体が他者に深く侵入されるような、

心の傷み、“あなた”は、

見ることができなく―――て、

手を伸ばしても触れることが出来な―――い。

(But I'm sure you are there...)

(Together, Never, Forever, Everywhere...)

そうだったらいい―――のに。


―――自転車は左側通行をする。

車は渋滞している。

そして排気ガスの臭いで蜃気楼さえ見えてきそう―――だ。


「外に出たはいいがトンネル―――だ」

「宇宙の外には、やっぱり宇宙があった・・・!」

「ミクロの世界も同じだ、顕微鏡では見えても、

さらに顕微鏡では見えない世界があるだけ―――だってね・・」


雲の動きも鳥が夕方塒へと変えるのも、

人の流れも、車の流れ―――が、淋しく切ないのも、

一種の脅迫や迫害で、自分のことのようで斥けられないのも、

心の内なる悲しみ、治癒を目指すこともできそうなのに、

歴史的に形成されてきた知覚の作用ゆえに遠い―――遐い・・。

(だから社会は、)一方通行で、

(それゆえに世界は、)環境と恒常的関係を持ち続ける、

それでも、それが不安や窒息と同時に狂気の一形態で、

―――死んだ空間としての背後であること・・を、

誰に止められるというのだろ―――う。


十八世紀や、十九世紀ならそれも許されたかも知れない、

二十世紀もかろうじて許されただろ―――う、

笑え笑え、適応に関する混乱、存在しない、要点もない、

心の中には絶えず様々な出来事が起こっていて・・、

二十一世紀はそれらすべてを語り尽くしてしまうだろ―――う。


「歩いてきた道―――は・・」

(A road where you don't look back,

a road where you don't stop,

a road with no one around...)


―――永遠に帰らない今日が拡大し、

増殖するような僕の知覚は、

誇大妄想や、幻覚の刺激における連鎖なのかも・・。

「人間到る処青山あり」

「否、 人間に流行する欺詐術策の容体なり」と・・・。


『顔』が見えた瞬間に、

(了解可能な変異を受け入れた―――んだよ・・)

“鳥籠”や“金魚鉢”や“ロッキングチェアー”が見えてくる、

カメラの位置にあるものは、

存在の知覚、たとえ自然の結合が引き裂かれ、

現前が限りなく遠ざかるような状況であって―――も。


環境破壊に、乱射事件。

いまさらになって、「死に場所」や「鬱くしい世界」・・。

古代文明の影、援助交際に不倫。

プロレタリアより深刻な毒舌をまき散らす人々。幼児虐待。

学校や教育の見直し、政治的腐敗と超高齢化社会。

人と人との日常的なつながりを指す人間関係。

崩れる波のように記憶の水位を押し上げてみせただけ―――。


聖書に本来あるべき何かが抜け落ちていて、

映画の中ではフランダースの犬も、

ハッピーエンドにされてい―――る、

アンコールワットにはジャングルが似合うし、

イギリスなら紳士服と髭が。

イタリアには長靴が、オランダにはチューリップと風車が

ドイツならソーセージとビールとお城。

カナダなら滝、中国は万里の長城。

エジプトならピラミッド、スイスならアルプスと時計・・。


笑って欲しい―――んだ、

現実の厚みや深みに達することのできない接触は、

ややもすると、欠如を強め、破綻を示すかも知れないけど・・。


そんな風に単純に、考えてはいけないかな、もっと、

僕等もっとこの思考の道筋を、

証明し、論証し、優しく微笑むこと―――で、

結びつけることは出来ないだろう―――か。


さて、どれくらい経ったろう――。

いやどれくらい僕は悪くなっただろう・・・。


背負わなくても―――いい。

寄り添わなくても―――いい・・。

(If you go, I'm going too,

uh 'Cause it was always you...)

それは『決定的な真理』ではないかも知れない、

人間の揺れを結びつける中軸の運動は、

隠喩や過程で、正常と異常という対立項では、

言い表せないかも知れな―――い。


誰もがそうであるように人を信じられなくなり、

というよりも自分が自分を、

少し信じられなくなっただけ―――かも知れないね・・。

生涯雇用が断たれ、あちこち飲み水を探す。泥水ではない。

それが救いであるという風に思うことも―――ない。

「不透明な未来の困難―――だ」

「様々な価値観が交錯するこの街の中はもうグローバル社会・・」

(だからコンピュータースクリーンなんかで、

知の領域を搔き乱されて―――ゆく・・)


また瞳を閉じながら、

(I Want You to Stay...)

人は何処へ行くのだろう、誰もが心を持っている、

ではこの憂鬱すらも主観への曖昧な粘着というのか・・。

眩暈のような、壊れそうな、心・・。

(“TILL I’M IN THE GRAVE”...)


永遠に続くような悲しみへの戸惑いは、

問いの終わりにはどうなるんだろ―――うね、

人を愛することの意味を見つけよ―――う。

(一緒にいた方がいいのかもね・・)

“様々な可能性が互いに結びつくこと―――は、

漠然とした時間だけど・・ね―――”

(でも、一人でいたいこともある―――だけど、

僕もけして、一人でいることが好きなわけじゃない・・)

“人は勝手だから、疎外感が道徳を作ったのさ、

そういうルールは生きた現在の間しか機能せず、

その上、その参加や連携で確実に間違ってしま―――う”


―――あの日の僕がそうであったみたいに、

心が軽くなったらいい、心の安らぎを得られたら、いい、

それでもそんなことは出来なく、て、やっぱり忘れてしまいた、い、

こんなこと誰にも話したくない―――と思う・・、

十代みたいな青臭いことばかりは言っていられない、だけども、

老害みたいなおじさんのようなことは、到底言いたくない、

何かもっと上手い方法見つけられたらいいね、

お互い色々あるけど、頑張らなくちゃいけないね、

そう言った次の瞬間に、頑張りすぎなくてもいいからねって、

言わなくちゃいけなくて、皮肉で、やっぱり胸が苦しいのさ・・・。


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心の中の迷路 かもめ7440 @kamome7440

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