狼さんと人の娘は魔法武者修行をする

柏兎 レイ

第1話 僕が彼女と出会った日

 とある世界の王国「アルムスニア」では、建国250周年記念祭が行われていた。大陸中から集まる人々・物で王国のメインストリートでは屋台がところぜましと道端に続いており、その数は数えられないだろう。此処メインストリートも勿論賑わっているがそれ以上に賑わっているところがある。それは「闘技場」だ。此処では、各地から腕自慢が集結し予選のバトル・ロワイアルから始まりトーナメント戦で優勝を決めるのである。勿論、怪我人は続出するが、戦闘狂や腕を試したい人が沢山居るために今回開催された。闘技場の中に入るとホールがありクオーツでできた床や壁が見える。そして、その中心にある上に登る階段を上がると目に見えるのはメインアリーナである。高くまで作られた観客席に囲まれて下のアリーナで当日は、激戦が繰り広げられる。またこのアリーナはは戦闘意外でもショーや音楽グループ等のライブにも利用できるらしい。そして、その観客席に1人の狼の獣人であり禁忌の魔法を使い不死身になってしまった魔法使い「ゼノ・アスター」が座っていた。普段は旅をしながらこの世界を放浪としているが今回の戦闘試合バトルゲームを聞き付けて昨日エントリーしたのであった。無名の者のエントリーのため初戦のバトル・ロワイアルからのスタートとなる。今は無名の彼でも数百年前までは一応魔王をソロで倒した魔法使いでその実力今も現存しているが、あまりにも表舞台に出なかったので忘れ去られてしまいこのような事態を招いたのである。しかし、ゼノとしては初心を思い出せるのでと思っているのであった。


「明日はどこまで魔法を使うのかな」


 落ち着いた声を発しながら立ち上がる。その姿を見ると、身長は180cm程でガッチリとした体格であった。頭にはふわふわの紺色の毛で覆われた狼の耳。背中側には同じ色の尻尾。杖を持つ手は狼の手ではなく5本指ある人の手であった。

 彼は観客席を見渡すと軽く欠伸をして体を伸ばしながら歩き始め、観戦席を後にした。


——玄関ホール


 ゼノは闘技場の宿泊施設を一部屋利用しようと考えた為玄関ホールへ向かっていた。そして、受付をしようとした時、ゼノは入口付近で2人の男に挟まれた1人の16~8くらいの少女を見かけるのであった。


「ねぇちゃん元気してる~?俺達と楽しぃ~ことしない?」


「ちょっとくらいなら良いじゃぁ~ん」


 男性はそう問い詰めるが少女は困った表情で俯きながら立っていたのであった。しかし、それを見た男性は気が弱そうな人と思い込み更にヒートアップになり問い詰める。


「君たちさぁ~。趣味悪いねぇ~」


ゼノはその2人に近付いてそう話しかけるのであった。それを聞いた男性はゼノの方を見るが大した人でもないと思い込み高圧的な態度を示すのであった。


「何だよ。てめぇはチビは消えてろ」


「そうだそうだ。消えてろ」


 ゼノはその言葉を聞き笑いながら指パッチンをするのであった。


——パチン


 その音が聞こえた時には片方のの男性は気絶していた。そして、ゼノは立て続けに話し始める。


「君もさ。これと同じ目に遭いたい?」


 倒れた男性の体を指でツンツンしながらもう片方の男性の方を見る。すると、焦ったように首を振りその場から消えるのであった。それをみたゼノは安心し、少女に話しかけるのであった。


「大丈夫ですか?」


「はい……。ありがとうございます」


 少女はお礼をしてゼノの方を見るのであった。そして、狼の耳や尻尾を見ると獣人だと理解するのであった。そして、話し始める。


「獣人の方なんですね」


「そうだけど……。どうしたの?」


 ゼノは、そう聞き返すのであった。しかし何でもないという身振りをされたのでそれ以上は聞かないのであった。


「では、私はこれで」


そう言うと少女は外に出ていく。その後ろをゼノは見ていた。姿が見えなくなると受付の方へ行きそもそもの目的を行うのであった。


——少女視点


(名前……聞けなかったな。また、会えたら聞こうかな)


 少女はメインストリートへ繋がる路地を歩きながらそう考えていた。そして、メインストリートに付くと競技場とは逆方向の住宅街へ向けて歩いていくのであった。


 一方ゼノは部屋を借りることに成功し寝室のベッドで寝転がっていた。


(ナンパとか……そんな世の中になったんだな)


 ゼノも先程のようなことを考えていた。そして、明日のゲームに向けて眠るのであった。

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