これ、最後はどうなってしまうんだろう。
本作を読めば、そんなハラハラ感を読者は必ず抱くことになります。
一人暮らしをしている七十歳のフミオ。彼はある日、一匹の家蜘蛛を発見する。もともと小さな虫が大好きだったフミオは、家蜘蛛にイチローと名前をつけて可愛がる。
しかし、イチローはとっても元気だった。家にいる害虫の類を捕食し続け、ぐんぐん『彼』はある変化を遂げていく。
フミオは可愛がっている様子だし、作品雰囲気もどこかほのぼのとしている。でも、イチローの内面はどういうものなのかわからない。
だから最終的に、この話がどこへ向かうのかと予想がつきません。果たして、この平和な雰囲気はどこまで続いてくれるのか。それとも凶悪な結末になるのか。
童話的とも言えるし、文芸的とも、ホラー的とも言える。果たして最終的な着地としては、どのジャンルに最も近いものとなりうるか。
そんな予想の付かなさに読者が振り回される、とても面白い作品でした。