第24話 嘘つきと下手な嘘
やり直しが実行された。
「希洋くん! ちょっと優瓜くん回収してきてくれる?」
勢い良く扉が開かれる。出てきたのは花威。
「俺が行く!」
咄嗟に、
何か行動を変えなければ、きっと起きる未来は同じだ。
「俺も行くよ。一人で行くのは――」
一緒に行こうとする希洋に首を振る。
「多分、俺じゃないとダメだから」
二人が何か言う前に琉海は研究所に飛び込んだ。
――壁や床にはこれでもかと血の跡がついている。
よく見れば、天井にも。
鉄臭い匂いも残っている。
嫌悪感はしたが、
(人が死ぬ所なんてほとんど見た事ないし……さっきの事も、一瞬すぎて実感が追いついてない)
まだ脳が処理しきれていない。
理解したら動けなくなる気がして、とにかく足を前へ前へと進める。
優瓜が何も気にしていないように語っていたのは、今の琉海と同じような理由だからじゃないだろうか。
実感したら、心が持たないと分かっているから悲しくないふりをしている。
「優瓜!」
姿を見て、
「あ……? 琉海君、どうして」
「んーなんて言うか、分かんないけど! 俺、未来を見てきたというか、なんかえっと」
「す、すまない。今はその……理解が」
「あっごめん、大丈夫?」
頭を抑える優瓜。
触れるとほんの少し肩を震わせた。
「話は、聞くよ」
「えっと……なんて言ったら良いのかな」
「ゆっくりで良い」
「ちょっとだけ、未来を見てきた」
「未来を?」
「うん」
信じてくれるかは賭けだ。
優瓜は半信半疑というような顔で琉海を見ていたが、続きは聞いてくれるらしい。
「それでね、優瓜の話も聞いたよ。本当は救世主じゃないとか」
「……ははっ、未来の私は随分と素直だね」
「花威のおかげかな?」
「なるほど。それで?」
顔色は悪いが、興味深そうに続きを促される。
信じてくれているようだ。
「えっと、これから花威にCure基地へ行こうって言われるんだけど、断ってAssortに帰らない?」
「どうしてだい」
「それは……」
慎重に言葉を選ばないといけない。
一等魚神が居たと言ったら、また優瓜は
しかし、変に濁したってバレるか怪しまれる。
どうしたものかと、無意識に右手が髪を掴んだ。
「Cure基地、女の人しかいなかった」
咄嗟に出てきたあまりにもくだらない嘘。
それを聞いて優瓜は笑い出す。
「くふふっ、ははっ! 君……ふふ。嘘が下手にも程が有るだろう」
「なんでバレたの!」
「なんでって、そりゃ、ははっ痛たた」
「ああぁ、大丈夫?」
優瓜は頭を抑え、くたっと力を抜いた。
「はぁ……良いだろう。君がそこまで言うのなら」
「ありがとう」
「だが、これだけ聞かせてくれ。……君が見てきた未来というのに、先生の仇が出てきた。その認識で相違ないか?」
「……なんでもお見通し?」
「少し考えれば導き出せるさ」
真剣な目で、優瓜は琉海を見ている。
黒く充血した目が、不気味に琉海を捉えて離さない。
「……うん。そうだよ。だけど、勝てない」
「そうか。……君にはとんだ迷惑をかけたらしい。悪いね」
「本当に。もうやめてね」
「保証はしないがね」
何か言ってやろうと思った。が、やめた。
もし、琉海の家族が殺されたら。
たとえ勝てない相手だったとしても殺しに行く事を選んだだろう。
そこに理性が有るかと言われれば、分からない。
「琉海君」
「何?」
「……君は、私からどこまで聞いた?」
「救世主じゃないとか、偏食は嘘とか」
「……そうか。……そうかぁ」
気が抜けたような声を出し、優瓜は天井を仰いだ。
その目は、どこか安心しているようだった。
――あとがき――――
毎話書き始める前は(早く終わらせたい……続き書けない……)も思っていますが、書き始めると楽しくて一瞬で時間が過ぎます。
楽しんで読んでもらえてたら良いな!
面白かったら、フォロー、いいね、コメント、レビュー等してくれると嬉しいです。
次回、28日更新予定です。よろしくお願いします!
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鬱ソシャゲの主人公にTS転生した男子高校生が世界を救う話。自分のために世界を救っていたらキャラからの好感度がおかしな方向に振り切れた 空花 星潔-そらはな せいけつ- @soutomesizuku
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