02話:『黒いライオン』

ここから商店街まで約一キロ。

走って3~4分か?いや、最近走ってないから5分かかるかもしれない。


少年の背丈から推測するにどんだけ全力疾走で逃げて来たとしてもあの場所まで7....いや10分近くかかる。それから俺に接近するまでの時間、俺がそこへ移動する時間を考えればその黒いライオンとやらはもうどこかに行っている可能性は大いにある。



『約束破ったらだせぇよな。』



久しぶりに走った。

だが今はそんなこと気にならない。


すごいな少年は、俺があんくらいの頃は目の前で父親食い殺されたら尻餅ついて俺も死んでるだろうな。


良く走ってきた、一キロも。


(褒めてやりゃ良かったかな。)



『くそが、燃えかすで足場が悪い。』



俺の身体能力こんなもんか、笑えて来る。


昔から運動神経悪い方じゃないんだけどな。





『商店街.....、ここにいんだな。』



確かに魔獣特有の鉄臭い臭いがズンと鼻に響く。


いや、食い殺されたヒトの血の臭いかもしれないが。




『おい、出てこいよ。』




やっぱりもうどっかに行ってしまったか?


できるだけ全力疾走してきたんだけどな。



グルルルルルルル_________




『は........いんじゃねえか。』




俺の目の前にいる黒い魔獣。確かにこいつのでかさじゃ成人男性なんて飲み込めるか。


確かに.......、こりゃあ黒いライオンさんだな。



『俺がぶち殺す。』




ヴォォォォ___



バシュンッ



黒いライオンは俺目掛けて突進して来る。

間一髪、ヒュルルルと横を抜ける空気を感じた。




『っ、危ない。まあまあ速いじゃねぇか.....』





脚力じゃ負ける。当たり前か、魔獣のなかでもすばしっこい部類になるだろう。

かといって今の近距離じゃだいぶ不利になる。


どこまで距離を伸ばすか。


技術でまけることはない。


俺は【最強魔術師】の称号がある。




『さて、どこまで離せれるかな。』




背を向けて突進してきたらそれこそ終わり。


いやだね、そんなかっこつかない死にかたは。



まずは背を向けないようにしてできるだけ下がる。

こいつの突進には余韻がある。急ブレーキは効かないんだろ。


だったらこうだ。




ドドドド_________





突進してきたこのタイミング、避ける!!




『へへっ、よっしゃ。』




余韻でこいつが走ってるそのタイミング、俺は反対方向に全力疾走!!!




『っ、十分だ。』




『【攻撃魔術:ブロードライズ】』




ドッパン___




俺の攻撃魔術、ブロードライズ。雷の要領で相手に攻撃を与え、余韻で燃え殺す。



『へへ、命中じゃねえか。』




黒いライオンとやら魔獣は痛みにのたうちまわりながらぱたりと動かなくなり、冷たくなった。





『こいつの毛に引っ掛かってるこの結婚指輪......あいつの父のか?』







俺は結婚指輪をポケットにしまって、シェルターへ行くことにする。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【最強魔術師】の称号を隠してたけど......、俺主催のEランクギルドに【上級者狩り】の異名が付いた @CH_wnlv2249

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画