第4話 ヒーロー
2005年に北海道のローカルでありながら全国に人気となった番組の初の祭りが札幌真駒内でありました。
私は健康上の理由で周りの反対を押し切って北海道へ飛び、会場で車椅子をお借りして参戦いたしました。
初のお祭り、多くの人が会場に来ていました。メイン会場は真駒内屋外競技場でした。競技場の聖火台の下にステージがあり、競技場の中は観覧席、トラックを囲むように出店や縁日コーナーがありました。
私は競技場の中からスタンド下のトイレへと向かいました。トラックを突っ切ろうとトラックに入った時でした。
トラック右側から多くの人込みが固まりとなってこっちへ向かってくるじゃないですか。しかもその人込み、前を向いていない!
そう、出演者が会場を見たいと予定外に回って来たのです。なのでその出演者を囲んだ人込みだったのです。そりゃ出演者の前に囲んでる人達は前よりも後ろの出演者に夢中で前なんて見ていない!!
焦りました。
向きを変えて戻ろうにもちょうど屋台で内側の競技場側にも戻れない。トラックの内側の端っこでこの人込みをやりすごすしか無い!
車椅子って座っているから立っていると見えないんですよね。しかもみんな出演者の方を向いているから視界の端にも入っていない。
しかも出演者が近くに来ているって事であっという間にその人込みは大きくなりトラックいっぱいに広がっている!これじゃ端っこでも避けられない。
慌てました。
なんとか向きを変えて一緒の方向に逃げないと!!
向きを変えようと必死でした。どんどん人込みは迫ってくる!
(ダメだ!間に合わない!)
倒れてもいいように体をギュッとしました。
その瞬間!一人の男性が車椅子とその人込みの間に入ってくれ
「こちら!車椅子があります!避けてください!」
両手を広げて人を流してくれました。
お陰で人込みで車椅子を倒される事もなく無事に出演者とその人込みは先に通り過ぎてくれました。
「大丈夫でしたか?」
振り返りニコッと爽やかに笑う20歳くらいの男性。スタッフさんでした。
「ありがとうございますぅ」
もう覚悟していただけに半泣き状態の私に
「良かったです」
そう言って車椅子を押してスタンド側まで運んでくれました。
重いだろうにと申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
「じゃっ!」
颯爽と去って行ってしまいました。
もう本当に感謝の気持ちでいっぱいでしたが、名前も何も聞くタイミングも無く、大きな祭だったのでスタッフさんもいっぱいいてその後会う事もありませんでした。
スタッフのお兄さんへ
あの時、誰もが出演者に夢中になっている中、端っこで固まっている私に気づいてくださりありがとうございました。
お陰で誰かと衝突してコケさせてしまう事もましてや人雪崩になる事もなく無事に済みました。
颯爽と現れ、颯爽と去っていく姿は本当に私にとってヒーローでした。きっとそんなつもりもなく助けてくれたのでしょうから余計にヒーローなんだと思います。
お陰様で無事に祭をケガもなく楽しめました。そして私のせいで祭にケチが付くこともなく済みました。
本当にありがとうございました。
今頃は立派な社会人になっていると思います。もしかしたら誰かの旦那様、お父さんになっているかもしれません。
人生、きっと思い通りに行かないこともきっとあると思います。でもお兄さんは一度は誰かのヒーローになったという事、知らないだろうけど誇りに思ってもらえたらと思います。
そしてお兄さんのように車椅子の人や困っている人を察知してサッと助けられるような誰かのヒーローになれたらいいなと思っています。
あの爽やかな笑顔のお兄さんの顔が曇る事が無い事を願っています。
一期一会【実話】 Minc@Lv50の異世界転生🐎 @MINC_gorokumi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。一期一会【実話】の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます