第4話 魔王は鍛治師と話す

「ここが俺の工房だ、さぁ入ってくれ」


 バモンに連れられるまま行き着いた先には、シンプルな外観の武具屋があった。

 中に入ると、壁一面に武器や防具などが置かれており、シンプルな作りながらもどこか美しさを感じさせる逸品ばかりだ。

 この腕なら申し分ないだろう。


「ほんでガリ坊、ローブはサイズ調節だけでいいのか?」

「いや、気が変わった。このローブを使って新しい防具、そうだなぁ、コート型の布製アーマーを作ってくれ」

「わかった、それで嬢ちゃんはどうするんだ? 剣の一本くらいなら打ってやれるぞ?」

「私の剣かー」


 エメリアには元々聖剣があったようなのだが、どうやら転移の時に聖剣だけ弾かれたらしく、今持っている剣も普通の鉄の剣だ。


「なら、この剣と同じ重さでとにかく丈夫なのをお願い」

「おいおい、これと同じ重さかよ……」


 バモンが困惑するのも無理はない。なにせエメリアが持って来たのはレイピアだったからだ。


「あっ、切れ味とかバランスとかは気にしなくていいから」

「「えっ?」」


 困惑する俺とバモン。

 えっ剣だったよね、切れ味いらないの?


「もしや嬢ちゃん、これって『素体』か?」

「そうよ」


 なるほど、この世界のエンチャントには2種類ある。

 一つは武器に属性や強度強化などの効果をを付与するオーラと呼ばれる方法。

 二つ目は『素体』と呼ばれる武器に自身の魔力を纏わせ物質化、魔力自体を武器とするマテリアと呼ばれ方法だ。

 前者は武器の刀身に上乗せする形、後者は武器の刀身を作るといったイメージだ。

 この剣が後者の戦い方、つまり『素体』なら切れ味はいらない。切れ味も何もかも纏わせた魔力で完結するのだから。

 ただしこれには欠点がある。


「嬢ちゃん、悪いがそりゃ無理だぜ」

「えっどうして」

「この重さだとマテリアエンチャントに耐えるだけの強度のものは作れねぇ。第一マテリアエンチャントってのは薄く膜みたいに張って使うもんだ。だが話を聞く限り幕どころか刀身そのものを成形するってことだろ? それじゃあこの重さじゃ無理だな」


 マテリアエンチャントは絶対的な効果と引き換えに武器を大きく摩耗させる、というか元々それをメインで使う技ではない、普通はここぞという時に使う大技なのだ。


「なぁエメリア、もう少し重い剣じゃダメなのか? そもそも前使ってた剣はバスターソードだっただろ」

「確かにバスターソードの重さならなんとか作れるかもしれんな……」

「そうなのね、ならバスターソードとレイピアを1本づつお願い」

「バスターソードとレイピアだな? いいぜまかせろ」

「それじゃあよろしくな」

「おう、服は明日、剣は今週中には仕上げておく」

「わかった、よろしく頼む」


 そう言い店を出る俺達を、バモンが呼び止める。


「おいお前ら、昼飯まだだろ?」

「あぁ、そういえば」


 少し前ギルドの酒場で騒いではいたが、実のところ俺とエメリアはその場の流れについていけず何も食べていなかったのだ。

 突然のことの連続ですっかり忘れていたが、思い出すと急に腹が減って来た。


「だったら広場の屋台の豚のタレ焼きがうまいんだよ。時間があるなら食ってみな」

「おっ、タレ焼きか。行ってみるよ、ありがとうな」



 ――――

 一言で言おう、教えてもらったタレ焼きは絶品だった。

 見た目はシンプルな豚の串焼きながら、噛むごとに溢れる肉汁に香ばしいタレが絡み、非常に美味かった。

 美味かったのだが……。

 

「フーフー、アチッ……フーフー」


 エメリアはタレ焼きをもらった時からずっと息を吹きかけ、冷ましては熱がるという行動を、3分ほど繰り返していた。

 確かに焼きたてのタレ焼きは熱かったが、別にすぐ食べれない程では無いんだが……。


「何よ」

「いや……お前猫舌だったのか」

「!……そっ、そんなわけないじゃ無い! ただ……熱いのが苦手で…………」


 そんな事を言いながら顔を赤くするエメリア見ていると、ふと昔のことを思い出す。


「エメリア、お前が魔王城に来た時の事覚えてるか?」

「もちろん覚えてるわよ。というかそんなに昔の事でも無いじゃ……そういえばあなたは私の転移した800年後から来たんだったわね」

「あぁ、だがずっと忘れられなかった。なんせ魔王城に来て第一声が『魔王に話があって来た!』、なんだから。しかも武器をその場に投げ捨てるし。あれ俺が攻撃してたらどうするつもりだったんだ?」

「それは――」


 エメリアが口を開こうとしたその時。

 

「誰か助けてくれ!」


 路地から子供が飛び出して来た。

 ボロボロのローブを被っている様子から孤児の様に見える。


「おいおい、大通りに出たからって俺らから逃げられるとでも思っていたのか? チッ、明日が納品だってのに手間かけさせやがって」

「来るな! 誰か助けてくれ!」


 子供を追いかける様に数人の柄の悪そうな男達が出てくる。どうやらスラムの子供を奴隷にしようとしているのだろう。

 にしても今日だけで2回目……。

 街を歩けば厄介ごとに巻き込まれてる気がする、いい加減自分の運の悪さを呪いたくなってきた。

 いっそ無視してしまおうか、勇者の行為に反するとか言われそうだが確実に面倒なことになる、だが。

 ――奴隷……か。


「どうするエメリ……ア?」


 相談しようと振り返ると、さっきまでいたはずのエメリアがいない。

 その直後

 

「あんた達、子供によってたかって何してんのよ!」


 声の方を向くと、作戦も立てずに割って入るエメリアの姿があった。

 

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魔王と勇者の異世界召喚記 マスカレイターズ @masukareiter

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