第10話

急な光に少し目を細めると、ドアの隙間からひょっこりと女が顔をのぞかせた。くりっとした瞳は、不思議そうな表情を作っていた。



女は薄暗い室内をじっと見つめている。光はリュウを直接照らしてはいなかったが、しばらくしてリュウの座る姿に気づいたようだった。あっ…と声を漏らす。



リュウはそっと女と視線を交わした。


女はそっと体を後ろに引いたような気がした。





「…おぅ。」



思わず声が漏れる。


リュウの言葉に、女は視線を合わせたまま少し頭を下げただけだった。



じっとこちらをみつめてくる。





「…ここは、どこだ?」



「…、…えっと…、家…です。」




ぼそっとした声が返ってくる。女の視線は徐々に強さを増していくようだった。ドアにかけた手に、力が入っていく。リュウは不思議に思って、すぐに気がついた。



警戒をしているのだと。




「…そうか。あんたの家…か?」



体はだるく、座っているのが少しきつかったが、そっと口元を緩め、安心させるように女に笑いかけた。すると少し視線を緩めた女がこくっと頷き、じっと次の言葉を待っていた。

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リュウ @sanlical

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