第一章

出会い

第9話

リュウは寒さに目を覚ました。あたりは真っ暗闇だった。人の気配はない。あんなに暑かったのに…と思いながらも、ここはどこだろうと、ぼんやりした意識の中で、ゆっくりと探っていく。目が慣れるまでに、そう時間はかからなかった。きょろきょろと目を動かすうちに、リュウは思い出していた。



単車で走っていたのは覚えている。いつものように三人で走っていたはずだ。解散し、熱さと気もちの悪さで飲みものを買い、ベンチに座ったのも覚えている。



そして、力強い瞳の女。



あの後は。

女を見た後、自分はどうしたのだろうか。




「…っ!」



頭が痛い。


さっきまでの熱での痛さではなかった。熱の痛みに奥の方からずくずくと蝕まれながらも、それに加えたどこかにぶつけた時の痛さに、なぜだろうと頭をひねった。


思い出すといっても、そのあとの記憶はない。




静かに身体をおこし、ほんの少しだけではあったが、輪郭だけは確認できるようになった部屋を見渡した時、室内に一筋の光が差し込んだ。

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