第4話 猫、ユイカを慰める
眠りから覚めた猫は起き上がると大きく口を開けてあくびをした。起きたというのにキャットタワーから降りようとはせず、その場でまどろんでいる。いつもだったら床に降りてユニアルに話しかけているところだが、そうはしなかった。
猫は怒っていた。まるで回収されてもいいというようなユニアルの態度は、猫や
ユイカをないがしろにしているように感じたからだった。
猫はユイカに目をやった。ユイカは何度もため息を落としている。そばに行って慰めようかと思ったが、行く気にはなれない。下に降りれば必然的にユニアルに会ってしまうからだ。
そうして外は暗くなり、家の中には電気が灯った頃、ユイカが動き出す。猫は時計を見た。自分の食事の時間だと理解している猫は、ユニアルがそばにいない事を確認してから飛び降りた。
キッチンを覗くとユイカが戸棚から猫の餌を出していた。お皿には溢れんばかりに餌が山盛りにされている。ユイカの心はここにあらずと言わんばかりだ。猫はすっかり上機嫌になって餌へと飛びついた。
餌を食べているとユイカが頭を撫でてきた。猫は餌を食べる喜びとユイカに撫でられる嬉しさに幸せな気分だった。
「ねぇ。もしもユニアルがいなくなったらどうする?」
ユイカが何かを言った。猫は言葉が理解できず、首を傾げた。
「まぁ、いなくなるっていっても代わりが来るんだけどね? 今一緒にいるユニアルはいなくなっちゃうんだよ。お前はどう思う、悲しい?」
ユイカは猫の頭を優しく撫でる。猫にはユイカの気持ちはわからなかった。ただ、不安そうな顔をしている事だけは気づき、体を寄せて慰めた。
『ご主人、元気出せよ』
猫の鳴き声にユイカは顔を綻ばせた。
「慰めてくれてるの? ありがとう」
ユイカは猫の頭をさらに優しく撫でる。それから冷蔵庫に向かい、自分のご飯を取り出して部屋へと戻っていった。
猫はユイカに頭を撫でてもらった事と、餌が山盛りな事が嬉しくてご機嫌だった。今日はなんていい日だ。何か特別な事でもあるのだろうか、と考える。
ふと、ユニアルが視界に入った。何か忘れているような、と考えたところで思いだす。
『掃除ばっかしやがって。別に俺はお前がいなくても構わないんだぜ。ご主人がいるし、うまい餌だってあるんだからな』
猫は鼻から息を吐き出し、口いっぱいに餌を頬張った。その姿をユニアルはカメラで見ている。しばらく見た後、掃除へと戻っていった。
次の更新予定
猫とお掃除ロボット 新谷式 @arayashiki_ikihsayara
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。猫とお掃除ロボットの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます